世界に衝撃を与えた英国EU離脱決定を受け、為替相場は一気に「円高」に動いた。危機に直面した世界中の投資家たちが「YEN」を買い求め、その価値は急上昇した──これがチャンスでなくて、一体なんなのか。
輸入企業等にとっては追い風が吹いているが、円高の恩恵は個人にもある。2012年以降、アベノミクスによる円安が進み、輸入価格の上昇を理由に食品や日用品の値上げが相次いだ。
例を挙げると、吉野家は2014年12月に急激な円安と米国産牛肉価格の上昇を理由に「牛丼並盛」を300円から380円に値上げ。昨年1~2月にかけては日清食品が「カップヌードル」などを5~8%、東洋水産が「マルちゃん正麺」など約200品目を5~25円、ハウス食品も「カレーマルシェ」など68品目を約10%値上げした。独フォルクスワーゲンや仏プジョーも同時期に2%程度の値上げに踏み切っている。いずれも値上げの理由に「円安」が含まれていた。
「円安値上げ」があったのだから、今度は「円高値下げ」が道理だ。各社に聞くと、吉野家は「現時点では価格を下げる検討はしていないが、今後さらに円高が続けば、検討の余地はある」(広報部)と“前向き”な回答。
日清食品は、「原材料は海外からの輸入で為替の影響は受けるが、年初に契約を済ませている。商品価格は現在の為替を反映するものではない」(広報部)とするが、“円高が続けば来年は値下げする”ともとれる。生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏が解説する。
「原材料はある程度、先に調達するものですから、為替変動をすぐ価格に反映するのは難しく、どうしてもタイムラグが生じます。ただし、牛丼や食料加工品、冷凍食品などは値上げで消費者離れが起きたので、失った顧客を取り戻したい状況にあります。半年以内には値下げが期待できます。
他にも、ダイソンなど海外家電メーカーの製品や輸入家具などはもっとタイムラグが短く安くなるはず。海外の木材を使用した戸建て住宅などの場合は2割近く値が下がる可能性がある」
※週刊ポスト2016年7月15日号