中国では習近平国家主席が中国共産党の最高指導者に就任して以来、5年間で、党政府幹部の自殺や死に方が異常だった件が120にも達し、それ以前の5年間の2倍以上になっていることが明らかになった。腐敗を取り締まる党の規律検査委員会の取り調べを受けたあとに死亡している例が多く、「反腐敗運動という名の殺人」との声も出ている。
これに対して、習氏は7月1日、党創立95周年記念式典での演説で「政権党として直面する最大の脅威は腐敗だ」と述べて、今後とも汚職摘発を一層強化する方針を明らかにしており、新たな“犠牲者”が増えそうだ。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、7月2日の午前から午後にかけての6時間以内に、広東省の幹部2人が自殺した。
1人は劉小華・省党委副書記(57)で、自宅で首つり自殺しているのが家族によって発見された。もう1人は深セン市煙台地区幹部の肖壁博氏(47)で、深セン市内の橋から飛び降りて死亡した。
さらに、6月28日には甘粛省の徴税事務所の責任者である楊某氏(45)が出勤してから13分後に8階の仕事場から投身自殺した。これで、分かった例だけでも1週間で3人の党政府幹部が自殺したことが確認されている。
この3人はいずれも地元の党規律検査委員会によって、汚職容疑などで取り調べを受けていたことが分かっている。
この取り調べは「双規」と呼ばれ、同委が指定した時間と場所に赴いて取り調べを受けることを指している。最初の頃は身柄は拘束されないが、双規がたび重なり、容疑が固まってくると、正式に逮捕されて起訴、裁判へと移っていく。
このため、自殺するのは双規の初期段階となる。一般的に、双規にかけられた場合、ほとんど容疑の証拠固めは終わっており、ほぼ有罪が確定している場合が多い。そのため、容疑者はこの段階で観念することになる。
このようなことから、双規を受けた幹部のなかには、海や川で泳いでいるうちに溺れたり、崖から転落したり、見通しがよいところを自動車の運転中に交通事故で死亡したりするなどの通常ではない死に方である「不審死」で最期を遂げる場合も珍しくないという。
最近では党の政治理論誌「求是」の副編集長で、随筆家としても知られる朱鉄志氏(56)が6月下旬、出勤した職場のあるビルの地下駐車場で首をつって死んでいるのがみつかり、自殺として処理された。朱氏は求是の編集業務を30年以上も担当しており、最近では党中央からの報道規制が強化されていることについて悩んでいたといわれており、「習近平政権の政治的締め付け強化の犠牲者」との見方も同紙は報じている。