すっかり選挙投開票日の定番番組となった、池上彰氏が司会を務める『TXN選挙SP 池上彰の参院選ライブ』(テレビ東京系)。ネットで“池上無双”といわれる、並み居る政治家たちに次々と鋭い質問をぶつけ、本音を引き出す鮮やかさは今回の参院選後の特番でも健在。与野党のトップへの鋭い質問が炸裂した。なかでも、圧勝となった自民党総裁の安倍晋三首相には、鋭い質問をぶつけた。池上氏が、選挙を振り返るとともに、安倍首相の今後を分析する。
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なぜ憲法改正を争点としなかったのか。その問いに対する安倍首相の答えは「どの条文をどのように変えていくかについては議論が収斂をしていない」というものでした。
年頭会見との矛盾については「憲法を改正するという考え方のかたが当選しないと、そもそも議論は進んでいかないわけであります」。つまり、どこをどう変えるかは、とりあえず改憲賛成の人を当選させてから考える、というわけです。
でもそれはおかしいですよね。これまで安倍首相は、戦争放棄、戦力の不保持などを明記した憲法9条、そして、憲法改正の手続きを記した96条の改正について具体的に言っていました。選挙でこそ、ここをこう変えますと訴えるべきじゃないですか。今回はなぜ、まったく触れなかったのかを尋ねたところ、こういう答えが返ってきました。
「96条を変える、あるいは9条を変える、それだけではなく、前文からすべてそれを変えたいと思っています。ただ、政治というのは現実どうなっていくか、結果を残していかないといけないわけで、ただ自分の要望を示すのでは、政治ではないんですね」
ここで私はあれ? と思いました。「結果を残していきたい」という言葉が気になったのです。
もともとは9条を変えるために総理大臣になったような人なのに、9条を変えるのは難しそうだと。そこで、9条にこだわらずに憲法を変えたという実績を作ること、つまり、思想を追い求めることよりも、「お試し改憲」をして歴史に名を残すことを選んだように感じられたのです。
じゃあ何を目指しているかと言えば首相在任期間ベスト3じゃないか。2年後の2018年秋、安倍首相は自民党総裁の任期満了を迎えます。もっと長く首相を務めたければ、それまでに衆議院を解散して選挙で圧勝し、任期延長を目指すことになるでしょう。
その選挙で勝てば、首相在任期間が佐藤栄作氏、吉田茂氏に続き、歴代ベスト3に入ることも現実味を帯びてきます。
では、その選挙で何を問うのか。それは北方領土問題ではないかと私は見ています。安倍首相はこの秋、ウラジオストックを訪れて、ロシアのプーチン大統領と会談を行います。その後、地元・山口にプーチン大統領を招待するといわれています。会談のテーマは、北方領土問題。日本側は4島の即時返還を求めていますが「2島返還、2島については協議をする」ことで合意し、日露平和条約を締結する。そして長年、膠着状態が続いていたこの問題の進展を国民に問うのではないかと思うのです。今回の選挙でアベノミクスの成果ばかりをアピールしていたのと同じ手法です。
※女性セブン2016年7月28日号