日本教職員組合の加入率(組織率とも呼ばれる)は年々下がり、影響力は低下したといわれることが多い。『日教組』の著書がある教育評論家の森口朗氏が、「表面的な数字だけで見てはならない」と実態を指摘する。
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文部科学省が毎年公表している日教組の加入率は、昨年10月1日現在で24.2%(加入者は約24.7万人)となり、「過去最低を更新」と報じられた。1989年、共産党系の全日本教職員組合(全教)と分裂した後は衰退の一途を辿っている。
しかし注目すべきは、一時は加入者の間でも「このままなら、日教組はなくなってしまう」と危機感を抱く者が少なくなかったのに、少しずつ減りはしつつも現在に至るまで加入率20%を割り込む気配がないことだ。
三重(加入率60%で全国2位)や福井(70%以上で全国トップ)など加入率の高い地域では赴任早々にオルグされる。他の地域でも、大学の教育学部などには日教組的な思想を持つ指導教授が多い。学生たちはその影響を受けやすいため、教員になっても組合費を払いたくないか日教組嫌いでもない限り、なんとなく加入してしまう人が少なくない。
新採用教職員の加入率も下がったとはいえ18.8%だ。現場の日教組教員に聞いても「4~5人に1人いれば十分だ」という声が返ってくるなど、「どうやら壊滅することはなさそうだ」という“余裕の雰囲気”が感じられる。
たとえば研究会などでまっとうな教員が「安保法を『戦争法』と言い換えるのはおかしい」と指摘したとしても、4人に1人の熱心な「日教組教員」が一斉にがなり立てれば、押さえつけることができるというのだ。
24%もいれば、いわば「立派なノイジー・マイノリティ」として活動できるというわけである。
●もりぐち・あきら/1960年大阪生まれ。中央大学法学部卒業、佛教大学修士課程(通信)教育学研究科修了。東京都職員として、1995年から2005年まで都内公立学校に出向経験がある。著書に『日教組』『いじめの構造』など。
※SAPIO2016年8月号