「いつも周りに謝ってばかりいたドリーに、自分自身を愛してほしい」──ディズニー映画の最新作『ファインディング・ドリー』に、アンドリュー・スタントン監督はそんな想いを込めた。
7月16日の公開初日、各地の映画館はほぼ満席。6月から先行上映されていたアメリカでは、『ズートピア』や『トイ・ストーリー3』を上回り、アニメ史上最高の興行成績を収める空前のヒットとなっている。
同作は、2003年に公開された『ファインディング・ニモ』の続編。主役・ドリーは、前作にも登場したニモの友達だ。懐きやすく天真爛漫で鯨と話せるなどの能力を持つものの、数秒前のことをすぐに忘れてしまう。今作はドリーが自分のルーツを探す旅に出るストーリーで、その家族愛に涙した親子は多い。また、“忘れん坊のドリー”に、わが子のある姿を投影し、涙を流す人も。都内に住む40代の主婦は、こう話す。
「ドリーを見て、うちの息子の小さい頃を思い出しました。3才で発達障害と診断されたのですが、集中力がなくてじっとしていられないから、何度幼稚園や学校に謝りに行ったことか。私はそんな息子を叱ってばかり。息子はずっと頑張ってきたんですよね。子供の時もっと認めてあげられればよかったなぁと、涙が止まりませんでした」
発達障害は、脳機能の発達が関係する先天性の障害。自閉症、アスペルガー症候群、注意欠損・多動性障害、学習障害などに分類される。近年、診断される子供の数は徐々に増えており、2012年には、「小中学生の6.5%に発達障害の可能性がある」という統計も発表された。
モデルの栗原類(21才)は、昨年5月に自ら発達障害であることを公表している。自身が発達障害だと気づいたのは18才の時。映画『ニモ』に出てくるドリーを見たことがきっかけだった。
《何でもすぐに忘れてしまう魚が出てくるので、「おもしろいね。何でも忘れちゃうんだね」と言ったら、母から「実は類もそうなんだよ」と。発達障害には、長期記憶があまり得意じゃない人もいるらしく、それで初めて自分が発達障害だと知りました》(朝日新聞7月16日付朝刊)
栗原は自分の障害を知っても決してマイナスに捉えたことはなかったという。
《「今すぐできなくていい」と、母はいつも僕に言います。僕は、普通の21歳に比べたら出来ないことが多いですが、長い目で見る感覚が、発達障害の子どもにも、その親にも大事かなって思います》(同前)
ドリーが伝えるメッセージは、温かく重い。
※女性セブン2016年8月4日号