在日米軍の規模縮小、撤退が現実化すれば、アジアの軍事バランスは大きく変化する。その時、中国が日本の領土に本気で手を出してきたらどうなるのか。軍事アナリスト・毒島刀也氏がシミュレートする。
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「尖閣諸島を巡り日中が衝突すれば、中国は5日間で日本に勝利する」──。今年1月発売の米・外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌上で、米・軍事シンクタンク「ランド研究所」の上席研究員、デヴィッド・シラパク氏は、尖閣周辺での偶発的な日中衝突が大規模軍事行動に発展するケースを想定し上の図のようなシナリオを描いた。
5日間の流れは以下の通りとなる、ポイントはアメリカの関与だ。
1日目、日本の右翼活動家が尖閣に上陸、日の丸を掲揚すると、中国が海警を送り込み、活動家を逮捕・拘束。2日目には日本の要請に応じ、一部の艦船を東シナ海に展開するものの、空母は太平洋に避難させるなど、最初から引け腰だ。
3日目には日本のさらなる支援要請により、魚雷攻撃を実行。ただしアメリカ国内では米中全面戦争を危惧する声が高まり、それ以上のリスクは避けようとする。4日目に中国のサイバー攻撃でアメリカが大混乱に陥ると、5日目には日本の支援要請を拒否する。その結果、日本は敗走するのだ。
シラパク氏は、「仮に米国が中国のミサイル基地を攻撃すれば、嘉手納基地などが弾道ミサイルで破壊され数千人の死者が出る」とし、米国にとって「尖閣諸島における最善の危機管理の手段は(米国が)“無視”することだ」と結論付けた。
このシミュレーションはシラパク氏独自の分析で疑問符がつく部分もあるが、イギリスの有力軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』は中国がイージス艦を増やしたことで「中国が日本の海軍力を上回る」と分析しており、確かにアジアの軍事バランスは変化してきている。
シラパク氏の5日間シミュレーションは在日米軍の存在が前提となっている。だが、仮に在日米軍がいなくなれば、もっと悲惨な状況に陥るだろう。
【PROFILE】毒島刀也●1971年、千葉県生まれ。航空専門誌の編集者を経てフリーランスの軍事アナリスト、技術ライターとして活動。主著に『戦車パーフェクトBOOK』(共著、コスミック出版刊)、『陸上自衛隊「装備」のすべて』(ソフトバンククリエイティブ刊)、『図解 戦闘機の戦い方』(遊タイム出版刊)がある。
※SAPIO2016年8月号