「東京都のトップは誰か?」──そう問えば誰もが都知事の名を挙げる。しかし、「東京都の本当のトップは誰か?」──そう訊くと、都政関係者や都庁職員からは別の名が出る。「影の都知事」とも、「都議会のドン」とも呼ばれる内田茂・東京都議(77)だ。
もうひとつの異名の方が内田氏の存在感をよく表わしているかもしれない。都庁のベテラン職員たちは彼のことを畏怖を込めて「神田大明神」と呼ぶ。
内田氏の地元・千代田区にある神田明神は平将門公を祀ることで知られる神社だ。「都の重要政策から副知事、局長人事まで、内田都議の承諾がなければ一歩も進まない。内田さんの意向はさながら明神さまのご託宣で、怒らせると“悪い結果”が待っている」(都庁関係者)と恐れられているのである。
その力の前には大臣や国会議員もひれ伏すという。自民党東京都連の国会議員の1人が語る。
「都連には会長の石原伸晃・経済再生相ら衆参42人の国会議員がいるが、誰も内田氏には逆らえない。都知事選に一番に名乗りを上げた小池(百合子)さんが推薦を得られなかったのは、“オレの言うことを聞かない候補はだめだ”と内田氏が反対したからだ。かわりに言うことを聞く傀儡候補として増田(寛也)氏を立てた」
自民党東京都連が所属議員に対して出した〈非推薦の候補を応援した場合は除名等の処分〉という恫喝文書も、都連幹事長である内田氏の名前があったからこそ威力を発揮した。
※週刊ポスト2016年8月12日号