中国の習近平国家主席ら中国共産党最高指導部の6人は江沢民元主席が90歳の誕生日を迎えた8月17日、滞在先の河北省の避暑地、北戴河で、江氏の別荘を訪問。お祝いの言葉を贈るなど祝賀の宴を開いたことが分かった。
これとは別に、江氏は最近健康不良で外出も控えていることから、警備レベルが最高レベルから1ランク下げられたという。これは江氏の発言力弱体化を狙う習氏の差し金だという。
このような相反するニュースがほぼ同時期に報じられるのは、情報が錯そうしていることを示しており、江氏の動静は依然やぶの中といえそうだ。
米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」によると、江氏の90歳の誕生日祝賀会を主催したのは習氏で、地方視察中の兪正声・中央人民政治協商会議(政協)主席を除く他の5人の党政治局常務委員を引き連れて、江氏の別荘を訪問して「健康に注意して、長生きをしてください」などとお祝いの言葉を述べたという。
さらに、張徳江・全国人民代表大会(全人代)委員長が自作の詩を贈ったほか、李克強首相らもそれぞれ贈り物をもって駆けつけたという。
これに対して、江氏は「北戴河会議での経済問題で討議が十分なされ、経済情勢が引き続き好調であることを期待しています」などと返礼の言葉を述べた。
これについて、同新聞網は「江沢民の政治的な影響力がまだ根強く残っていることを示している」と分析している。
一方、同新聞網は北京の軍事消息筋の話として、このところ江氏は健康がすぐれず、外出もほとんどしなくなっており、警備のランクが1ランク下げられたなどとの情報も報じている。この記事では「江氏の政治的影響力は低下している」と前者の報道とは正反対の見解を伝えている。
また、英BBCも「習近平は江沢民が90歳の誕生日を利用して、政治的な権威を一層高めようとしているとして、警戒を強めている」などと報じており、後者の立場をとるなど、江氏をめぐって正反対の情報が飛び交っている。
これについて、『習近平の正体』(小学館刊)の著者もある中国専門家でジャーナリストの相馬勝氏は「習近平、江沢民の両陣営から、それぞれに都合がよい情報がリークされたと考える方が妥当だろう。いずれにせよ、正反対の情報がほぼ同時に出てくるというのは水面下で両派の主導権争いが激しさを増していると解釈できる」と指摘している。