中国軍連合参謀部の王建平副参謀長(上将)が規律違反の疑いで身柄を拘束されたことが明らかになった。中国軍で事実上の最高位である現役の上将が規律違反で拘束されたのは、習近平指導部が軍の反腐敗闘争に乗り出した2013年以降では初めて。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が消息筋の話として報じたものだが、中国国防省のホームページでは、王氏の活動を伝えた記事などが削除されており、失脚したのは確実とみられる。
王氏は視察先の四川省成都市で軍事検察関係者によって連行され、取り調べを受け、王氏の妻や秘書らも汚職などの容疑で、すでに拘束されている。
王氏は2009年~2014年まで、人民武装警察部隊トップの司令官を務めており、武警トップが拘束されるのも初めて。王氏は同時期に政法部門のトップで、すでに汚職などで無期懲役が確定した周永康・元中国共産党社会局常務委員の側近だったとされ、周受刑囚の汚職事件に密接にかかわっているとみられる。
しかし、王氏は周受刑囚が起訴されたあとも、軍副総参謀長に昇格し、全軍軍事訓練監察指導小組(グループ)組長を兼務するなど、順調に軍の出世街道を歩んでいるとみられていた。
軍の上将経験者では今年7月、は軍ナンバー2の中央軍事委員会副主席経験者の郭伯雄と徐才厚の両氏に次いで、中国の元空軍トップ、田修思・全国人民代表大会外事委員会副主任委員が汚職などの疑いで取り調べを受けていることが分かっている。
これは来年秋の党大会を控えて、習氏が江沢民元主席に連なる軍内の上海閥の残党の排除に乗り出したとの見方が有力だ。
中国情勢に詳しく、『習近平の正体』の著書もあるジャーナリストの相馬勝氏は「上将の位を持つ現役の軍最高幹部が身柄を拘束されるのは王氏が初めてで、習近平主席の軍内での権力基盤が固まり、軍内では習氏の意向に逆らえない状況ができているなど、習氏の軍権掌握は決定的となったとみてもよいだろう」と指摘している。