何かと「暴力的」や「人情肌」など古いステレオタイプで語られることが多いヤクザの世界。現役ヤクザたちは、自分たちの存在をどのように考えているのか。暴力団取材のエキスパートであるライター・鈴木智彦氏が、現役ヤクザ100人に対する大規模アンケートを実施した。アンケートは100人すべてに直接電話して回答をもらった。アンケート結果を紹介しよう。
Q:社会に対していいたいことはありますか?
はい…54人
いいえ…24人
どちらともいえない…1人
ノーコメント…21人
「はい」と答えたヤクザの代表的意見は、「ヤクザだけが差別されていると思わないほうがいい。いつ人権を奪われるか分からない。一般人のみなさんにも警告したい」というものである。敵の敵は味方という論理で、左翼とヤクザの相性がいいことを思い出した。
ノーコメントだった21人の大半が、熟慮の末、「どうせ聞いてもらえない。言っても無駄」(関西独立団体幹部)と投げやりで、同様の諦めムードは暴力団社会全体に漂っている。
この質問は単純な二択にしたほうがよかったかもしれない。
Q:自分たちを悪だと思っていますか?
はい…52人
いいえ…30人
どちらともいえない…13人
ノーコメント…5人
悪の自覚を持つヤクザがかろうじて過半数を超え、少し安心した。たとえ建前であっても、かつての博徒のような日陰者意識が喪失したとき、暴力団は本格的な犯罪集団に変貌するだろう。
まともなヤクザなら、自分たちは悪ではない……とは言いつつ、任侠道で飯が食えないことくらい自覚している。「いいえ」と答えたヤクザはそれぞれ堅気のブレーンに正業を任せており、「シノギの全部が合法。悪事で飯は食ってない」(広域団体幹部)と胸を張る。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号