中国海軍の無人海底探査潜水艦「海翼7000」が太平洋のマリアナ海溝で、海底5751mの深度まで潜水していたことが分かった。これは、米海軍の無人探査機「シーグライダー」の持つ世界記録である6000mに次ぐ世界第2位の記録。海翼7000は今年8月の処女航海でこの記録を出しており、米軍の無人探査潜水艦の記録を破る日もそう遠くないとみられる。
これは、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が中国海軍関係者の話として報じたもの。海翼7000は母船である「探索1号」に搭載されている無人潜水艦で、今年6月下旬から8月上旬にかけて、最深部が1万1034mあるマリアナ海溝で初めての潜水実験が行われた。
無人探査潜水艦の開発は米国がもっと進んでおり、ワシントン大学が研究用に開発したシーグライダー号が6000mの世界記録を持っている。それに次いで、やはり米国のラトガース大学が開発したスカーレット号も6000mの記録を持つ。これら両無人潜水艦とも現在では米海軍が所有している。
これらの無人潜水の民間利用としては、深さ1万mの海底まで潜航できれば、海底の鉱産資源などの探査ができ、経済利用に弾みがつくことが予想される。
一方、無人潜水艦の軍事利用目的としては、海底深くに潜航する潜水艦を探査したり、あるいは攻撃用して爆弾を積んで、大型潜水艦に体当たりをすることも考えられる。
あるいは、敵の軍港近くの海底まで潜航して、その後、軍港周辺で浮上し、停泊している艦艇を撮影するなど偵察用としても使うことができるなど、さまざまな応用が効き、利用価値も高い。
中国の場合、海軍の戦闘能力が飛躍的に向上してきたのは2000年代からで、遠洋航海の能力は米軍や英独仏などの欧州諸国軍に比べて見劣りがする。しかし、今回の無人潜水艦の開発で、その海軍力が確実に向上していることが証明された形だ。
海翼7000を開発した中国科学院瀋陽自動化研究所のチームリーダーの于江成教授は海翼7000の生産コストは約1億元(約18億円)だが、量産されれば、乗用車並みにコストダウンすることも可能としている。
また、于氏は「海翼7000の当面の目標は太平洋の横断だ」と同紙に明かしており、海翼7000は今後、近くは日本沿岸の米軍基地やグァム、サイパン、ハワイの海軍基地、さらに最終的には北米大陸の米軍基地の偵察、あるいは攻撃が視野に入っているものとみられる。