母国で韓国人男性と結婚し、子育て中の在日女性2人が、韓国政府を相手取り憲法違反であるとして訴えを起こした。訴え出たのは、韓国で暮らす30代の在日3世の女性2人。韓国で子育て家庭に支給される「保育料支援」が、自分たちの子供が満4歳になった今も支給されないのは韓国政府の差別だとして昨年11月、憲法裁判所に訴願を行った(韓国「聯合ニュース」2015年11月17日付)。
不支給の決定は日本の特別永住者であること、つまり「在日」であることが理由だという。在日だけを蚊帳の外に置くような規定に対して、批判の声があがっている。在韓国ジャーナリストの藤原修平氏が報告する。
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原告の2人と同様に、最近日本で出産し0歳の子供を韓国で育てている在日韓国人女性は、こう嘆息する。
「私も子供も韓国籍ですから、支給されないのは納得できません。ただ両親が外国籍の場合は受給できないことを知り、それと同じように扱われているのだと思って諦めています」
両親がともに外国籍であれば、制度上、支給の対象にはならない。さらにこの女性は、保育所への入園手続きでこんな経験をしたという。
「保育所の入園申請はまず地域の住民センターで手続きをするよう言われたのですが、住民センターの窓口は『担当でないのでわからない。保育所に直接行ってくれ』の一点張りでした。そこで紹介された保育所に行くと、園長さんが『在日の子供を受け入れたことがないから手続きがわからない』と言うんです。
何件かたらい回しにされた挙げ句、外国人を受け入れたことのある保育園を紹介され、入園することになりました。後でわかったことですが、入園手続きは在日の場合でも住民センターで簡単にできるはずだったのです」
前述した聯合ニュースの記事には、韓国における在日の悩ましい立場を窺わせるエピソードも記されていた。取材時、原告2人の写真撮影を依頼したところ丁重に断られたという。その理由は、「お母さんが在日同胞だと知られれば、子供たちが幼稚園でもいじめにあうかもしれない」からだという。
在日である子供を保育料支援で差別し続けるならば、その子供が成長した時、母国愛を持つことも難しくなるだろう。
【PROFILE】藤原修平●1973年岩手県生まれ。韓国、中国東北部を中心に東アジア地域の取材を行う。2009年より韓国在住。
※SAPIO2016年11月号