我が国の年金制度が不安視されて久しいが、他の国はどうなのか──。その疑問に答えてくれる指標がある。アメリカに本社を置く人事・組織コンサルティング会社マーサーが、10月24日、「世界の年金指数ランキング」の最新版を発表した。
このランキングで、日本の年金制度は27か国中、下から2番目の26位となった。首位は5年連続でデンマークで、日本より唯一下に位置する最下位の国は2002年にデフォルト(債務不履行)した経験を持つアルゼンチンである。日本は韓国(22位)、中国(23位)、インド(25位)よりも下なのである。
このランキングは、世界中で少子高齢化が急速に進む中で、各国の年金制度が適切かつ柔軟に運用されているかどうかを評価することを目的に、年金額の「十分性」、制度の「持続性」、制度の見直し機能や透明性が担保されているかの「健全性」という3項目の指標から算出している。「十分性」「持続性」「健全性」の3項目の指数を合算した総合指数でデンマークは80.5で、日本は43.2、アルゼンチンは37.7である。平均は58.1だ。
同社が公表しているレポートによれば、日本の順位がこれほど低いのは、「十分性」と「持続性」の評価が低いためだという。「十分性」はデンマークの75.8に対し、48.5で、「持続性」は85.3に対し24.4だ。持続性についてはアルゼンチンの30.1よりも低い。
レポートの責任者でもあるデービッド・ノックス博士は、「2040年までに、南アフリカ(今回20位)では、退職者1人に対し働き手が7人と予想されているのに対し、日本では、退職者1人に対し働き手は1.44人に落ち込むと予想されています」と、持続性を問題視している。
日本の評価「D」は、〈対処すべき重要な弱点および/または欠落のある制度〉とされる。この調査は2009年から始まっているが、日本は2009年の11か国中11位を皮切りに、2010年14か国中13位、2011年16か国中14位と調査対象国が増えても、最下位争いを演じ続けてきた。
日本の年金制度に与えられた低評価について、“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏はこう語る。
「年金額が十分でないのはご存じの通りですが、年金の給付総額は1989年度で22兆円だったのが、2014年度には54兆円まで膨れあがっている。団塊世代が高齢者になっただけでなく、平均寿命も延びているからです。この問題は見通せたはずなのに、政府は何ら有効な手段を採らず、ずっと年金の議論から逃げ続けてきた。各国と比べて、評価が低いのも当然です」
成長戦略として世界一の技術大国を目指すと息巻く政府だが、“年金後進国”からの脱却がなければとても成長など望めない。
※週刊ポスト2016年11月11日号