“コンビニの数より歯科医が多い”といわれる現代、一般的な虫歯や歯周病の治療とともに、歯科矯正を掲げる歯科医が増えている。実は日本の制度上、歯科医なら誰でも歯科矯正の看板を掲げたり、治療してもよいことになっている。
しかし、専門性・特殊性が高い総合治療である矯正治療は、歯学部在籍中の6年間だけでは専門知識の習得が終わらず、卒業後に専門研修を5~10年間受けて経験を重ねる必要がある。こうして、歯科医とは別に矯正歯科医としての技能を積むのだが、残念ながら日本ではこの違いがあまり知られていない。
日本臨床矯正歯科医会が行った2014年の調査によると、他院で矯正治療中の患者からセカンドオピニオンや転医の相談を受けたことがある歯科医院は、実に61%にものぼる。
その相談件数のうち、不適切な治療の相談は56%に至る。つまり、歯科矯正において、患者にとって満足のいく治療が行われていないケースが少なくないのだ。
『後悔しない歯科矯正』(小学館101新書)の著者で、医療ジャーナリストの増田美加さんによると、日本の歯科医院は約7万軒だが、このうち矯正歯科を標榜する歯科医は約2万2000人以上で、現状で矯正歯科の専門医は500人未満にすぎないというから驚きだ。
「歯科矯正のために何年も歯科医に通って、歯並びが改善されないどころか、さらに悪化して顎関節症になった事例も報告されています。
歯科矯正は専門的な知識が必要なのは事実。最初から専門医の受診を受けられなかったとしても、途中からでも通院先を変えて治すこともできます。今の治療に疑問を感じたら、“せっかくここまで続けたのだから”などと思わず、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします」(増田さん)
正しい歯科矯正を受ければ、口元が整って見えるだけではなく、顔全体の印象までガラリと変わることが多い。
星歯科矯正(神奈川県相模原市)院長・星隆夫さんは次のように説明する。
「実は、日本人は世界的に見ても歯並びがよくありません。というのも、日本人はもともと日本にいた体も歯も小さい縄文人と、大陸から来た体も歯も大きい弥生人の混血で、歯並びが悪くなりやすい。そのためあごと歯の大きさのバランスによっては乱杭歯(歯並びががたがたしていること)やすきっ歯になりやすく、出っ歯や受け口も少なくありません」
骨格の大きな欧米人もそうでない日本人も、歯の数は同じ。欧米人よりあごの狭い日本人は、そもそも歯並びが崩れやすい運命にあるのだ。
※女性セブン2016年11月17日号