まさかの米大統領選勝利でわが世の春を謳歌するドナルド・トランプ氏が、密かに怖れているのは「暗殺」だ。
トランプ氏の住居があるニューヨーク中心部の高層ビル「トランプタワー」前には、投票前から防弾チョッキを身に着け自動小銃を構えた警官やパトカーが並び、周辺の歩道の通行まで規制された。
「入り口付近で電話していると、『近づくな』と警官に制止された。投票当日は荷物のセキュリティシステムが設置されるなど、異常なまでの警戒心だった」(取材した日本人記者)
投票3日前にネバダ州で開かれた集会では、聴衆から「銃だ」の声が上がり、演説中にトランプ氏が舞台裏へ避難する一幕があった。国際問題アナリストの藤井厳喜氏は、「トランプ氏が暗殺される危険性は高い」と指摘する。
「暗殺されたジョン・F・ケネディとトランプ氏には共通点があります。ケネディ家は名門の実業家だったと言われていますが、所詮は中小財閥で大財閥ではない。その中小財閥の人間が、ベトナム戦争に反対の動きをしていたことに、アメリカの大財閥を始めとするエスタブリッシュメントが反発したのです。暗殺の背景にはそういう環境があった。
トランプ氏も大財閥ではなく新興財閥です。今回の選挙戦でトランプ氏が集めた選挙資金は130万ドルで、ヒラリー・クリントン氏が集めた選挙資金の4200万ドルには遠く及びません。それだけヒラリー氏は様々な企業から寄付を受けた。つまり大財閥がバックについていたということ。
また、トランプ氏はグローバリズムからの脱却を掲げましたが、グローバリズムを推進する大財閥とは利害が対立しています。アメリカでは大財閥にたてつくと暗殺の危険性が高くなる。そして、その逆のケースはない。だからトランプ氏は危険なのです」
果たしてトランプ氏は大統領の任期を全うできるのだろうか。
※週刊ポスト2016年11月25日号