アメリカ大統領選挙でまさかの逆転勝利をおさめたドナルド・トランプ氏(70才)。数々の暴言発言が話題になってきたが、その真意とはいかなるものなのだろうか。
「イスラム教徒の入国拒否」「メキシコとの国境に壁を作る」など、選挙期間中の過激な発言から「レイシスト(差別主義者)」と呼ばれるトランプ氏。「第3次世界大戦が起きるのでは」と世界中を不安に陥れているが、元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんの分析は意外にもNO。「暴言はパフォーマンス」と指摘する。
「アンチ・トランプ派の偏見にさらされるトランプ氏ですが、本当の彼は現実主義のビジネスマン。大統領就任後は選挙中の暴言を引っ込め、それぞれの国の利益や価値観に配慮するでしょうね。日本で言えば竹下登元首相のような、バランスのとれた調整型の政治を行うはずです」
そのトランプ新大統領により、「冷戦後最悪といわれる米露関係が劇的に改善する」と佐藤さんは予想する。
「トランプ氏の掲げる『アメリカ・ファースト』(米国優先主義)は、『この先は自国の利益を優先して、余計なことには首を突っ込みません』という表明です。今後、大国である米国とロシアは互いの縄張りを尊重して“強い者同士けんかせず”となる公算が強い」
米国が他国に介入しない「孤立主義」を強めることで、世界から「警察官」が消えて、テロや戦争がより多くなるという指摘もあるが、佐藤さんの分析はやはり正反対。世界を悩ませるテロ活動のリスクが減る可能性もあると佐藤さんが続ける。
「米露など各国が入り交じって混迷するシリアから米国が手を引けば、中東情勢が落ち着く可能性が高い。するとイスラム過激派がテロ活動をする口実がなくなり、世界でテロが減るかもしれません」
中東が専門の放送大学教授・高橋和夫さんも次のように分析する。
「IS(イスラム国)などによるアメリカに対してのテロの試みはすでに高いレベルで行われています。それが実行されていないのはアメリカの治安対策がしっかりしているから。トランプになったからといってこれ以上ひどくなることはないとみています」
一方、日本を含む東アジアでは逆に緊張が高まる可能性があると産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんは語る。