ビジネス

年金の負担増サイクル 現役→高齢者→低所得者の順に回す

年金の負担増サイクルとは

 イソップ物語に「狡い狐」(ずるいきつね)という寓話がある。2匹の猫が獲物の分け前で争っていると、狐がやってきて「ぼくが公平に分けよう」と半分にする。しかし、秤で量ると一方がわずかに重い。

 そこで狐が多い方を少し食べると、今度は逆の方が重くなった。これを繰り返し、狐はまんまと全部食べてしまう。この国の年金役人はイソップの狐より狡猾だ。

●「世代間格差是正」を名目に現役も高齢者も負担を増やす

「高齢世代と現役世代の格差を是正する」

 厚労省はそう掲げて今国会に年金減額法案を提出、与党の強行採決で衆院を通過した。物価が上昇しても、現役世代の平均賃金が下がれば年金受給者に払う年金額を減らす内容だ。当然、受給者の生活は苦しくなる。

 だが、それで現役世代が楽になるわけではない。この間、サラリーマンの平均賃金は下がり続けているのに、厚生年金保険料はこの9月から大幅に引き上げられ、月収30万円の人は年額約1万3000円(労使合計)もの負担増になった。

 年金役人はまず現役世代の保険料を上げ、それに不満を持つ現役サラリーマンに“高齢者はもらいすぎ。不公平だ”とささやいて高齢者に怒りを向けさせ、世代間の争いをつくり出して次に高齢者の年金をカットしようとしているのだ。

●現役→高齢者→低所得者の順に回す“負担増サイクル”

 経済ジャーナリストの荻原博子氏の指摘は鋭い。

「政府は社会保障を負担させる相手を3つに分断して順番に回しているように見える。まず現役世代の負担を増やし、次に高齢者、続いて低所得者を標的にする。そうやって互いに敵対させることで国への不満を巧妙にそらしながら、結局はみな負担が重くなっていくわけです」

 医療・介護の負担増がそれと同じやり方だ。

 今年(2016年)、現役世代(40~64歳)が負担する介護保険料は過去最高の月額5352円(全国平均)まで上がった。すると、厚労省は高齢者へと標的を変え、来年度から高齢者が介護給付を受ける際の自己負担を1.5倍(2割→3割)に引き上げる構えだ。

 さらに75歳以上の低所得者の健康保険料(後期高齢者医療制度の保険料)軽減措置を来年度から段階的に廃止する方針を検討しており、実施されれば保険料が2~10倍にハネ上がる。

 まさに現役→高齢者→低所得者の負担増サイクルだ。

※週刊ポスト2016年12月16日号

関連記事

トピックス

屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
人が多く行き交うターミナル駅とその周辺は「ぶつかり男」が出現する(写真提供/イメージマート)
《生態に意外な変化》混雑した駅などに出没する「ぶつかり男」が減少? インバウンドの女性客にぶつかるも逆に詰め寄られ、あわあわしながら去っていく目撃談も
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
大の里、大谷
来場所綱取りの大関・大の里は「角界の大谷翔平」か やくみつる氏が説く「共通点は慎重で卒がないインタビュー。面白くないが、それでいい」
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
CM界でも特大ホームラン連発の大谷翔平
【CM界でも圧倒的な存在感の大谷翔平】「愛妻家」のイメージで安定感もアップ、家庭用品やベビー用品のCM出演にも期待
女性セブン
堀田陸容疑者(写真提供/うさぎ写真家uta)
《ウサギの島・虐殺公判》口に約7cmのハサミを挿入、「ポキ」と骨が折れる音も…25歳・虐待男のスマホに残っていた「残忍すぎる動画の中身」
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン