中国の習近平・国家主席兼中央軍事委員会主席は2012年の就任後、中国人民解放軍内の禁酒を強力に進めてきた。だが、2015年初めから今年8月末までの20か月で102人の中国空軍幹部が禁酒令違反によって処分されていたことが軍機関紙「解放軍報」の調査によって明らかにされた。
空軍の場合は戦闘機が主力の武器で、判断ミスが大きな事故につながることから、飲酒は事故の大きな原因になるのは不可避。それだけに、100人以上の幹部の処分によって、空軍の士気の低さが如実に表れているといえそうだ。
解放軍報によると、この102人の内訳は刑事罰に問われるなどの厳重処分が15人で、失職や内勤などの配置換えが87人となっている。
禁酒令が出された2012年末から1年間では、分かっているだけで処分者が13人だったものの、これは泥酔して、喧嘩したり、任務に就けなかったなど、極めてひどい状態だった者だけ。昼食中に飲酒するなどした幹部は見逃されているようだ。
ところが、空軍内では戦闘機の墜落事故など重大な事故が増えていることから、中央軍事委では罰則を強化。現場でも徹底して指導したところ、昨年から罰則を受けるものが急増している。
ある部隊では8月のある1日だけで、昼食で飲酒した幹部9人が処罰されている。軍関係者は「夜の宴会は日常的で、勤務を終了した者はほとんど参加しているが、そうした実態は上層部には報告されていない」と指摘する。
また、230万人の軍全体のなかで、160万人を占める陸軍は地方部隊がほとんどのため、その生活実態は中央にはほとんど知られておらず、飲酒は日常茶飯事で、「実態は極めて深刻だ」と明かす。
習近平主席は軍事委主席就任後、初めて軍を視察した際、「招集がかかればすぐに集まり、すぐに戦争の準備を行い、戦えば勝つ」と檄を飛ばしたが、そう命令せざるを得ないほど、軍の士気が低下していることの表れと受け取れる。
中国軍内では制服組トップの徐才厚、郭伯勇の両軍事委副主席が腐敗問題で逮捕、投獄されているが、いまだに禁酒令が徹底されていないところに、軍の腐敗ぶりの深刻さが表れているようだ。