「日本の有名なテレビ局が、うちの局の映像を勝手に使うなんて。しかも“あんな形”で。日本のメディアは優秀だと聞いていたのに呆れていますよ!」
電話取材にこう憤るのは、中国河北省のローカルテレビ局、邯電視台の局員・周岱氏だ。
怒りの矛先は9月23日放送の昼の情報番組『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)のコーナー「週刊Newスペクター」。放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏が海外の映像を紹介するコーナーで、その日は、中国の宝石店で富裕層の女性客が激怒したというニュース映像だった。
女性客はネックレスを1つずつしか見せない店員に「盗難すると思われた」と激怒。「私にお金がないと思っているんでしょ? これでもカネがないって言うの?」と大量の紙幣を投げつけた。
これには、コメンテーターとして出演していた実業家の経沢香保子氏も「お金を持ってるからって謙虚さを失うと人が離れていってしまう」と呆れ顔だった。
中国人の傍若無人な言動は、日本のメディアもよく取り上げてきた。今回もその類なのかと思いきや、事実はまったく違った。
この映像、冒頭の邯電視台が昨年9月に放送したバラエティ番組『あなたならどうする』の一部分で、店員も客も役者が演じ、周囲の一般人がどう反応するかを観察するドッキリ映像だったのである。
作り物の映像をニュースとして取り上げられたことに、同番組の担当者の周氏は怒り心頭なのである。
「そもそも日本のテレビ局に映像使用を許可した覚えはありません。フィクション映像を使って、中国人を批判されたことも不本意です」(周氏)
なぜこんな失態が起こったのか。中国メディア事情に詳しいジャーナリストの奥窪優木氏が分析する。
「その映像は“中国の富裕層がブチ切れた映像”として昨年、インターネットに出回っていました。その時、邯電視台のプロデューサーらが、テレビ局のSNSで“これはドッキリ映像です”と注意を促していたんです。『ワイド!スクランブル』のスタッフは少し調べればわかったことなのに、恥ずかしいミスとしか言いようがない。同番組ではデーブ氏の会社の提供映像として出されていたので、デーブ氏が、古い“ネタ”を掴んでしまったのかもしれません」
いずれにせよ、中国のテレビ局に許可申請を出していれば防げた問題ではある。テレビ朝日に聞くと、番組のディレクターから本誌記者に電話がかかってきた。
「貴誌に指摘されて調べたところ、ドッキリ映像だとわかった。調査が足りなかったと反省している」
先の周氏は、「パクリも誤報もダメヨ!」と繰り返していた。あぁ、お粗末すぎる……。
※週刊ポスト2016年12月23日号