日本の株式市場に「棚ぼたバブル」をもたらしている円安だが、当然いつかは局面が変わる。円安が終わり、円高になれば株価が下落し、輸出・外需依存度の高い日本経済は失速する──と不安視する声もあるが、「それは大間違いだ」というのは、投資銀行家のぐっちーさんこと山口正洋氏である。
「すでに日本からの輸出品は円高でも競争力のある高度な技術が求められる製品ばかり。円高で輸出企業が打撃を受けるという論はあまりに安直です。円高で輸入産業は潤い、内需型の株式が買われる。何より日本国民の購買力はどんどん上がる。現在でもGDPの6割は個人消費であり、それが伸びることで経済成長に繋がります」
円安では外貨を集めることができ、円高に振れた時に内需が拡大。円安バブル時に資金を溜め込んでおけば、国内消費の増加率も上がる。より円高の恩恵を受けやすい。
「国連はGDPだけでは把握しきれない本当の豊かさを表わす指標として、『総合的な富裕度報告書』という経済統計を発表しています。経済生産を生み出す主体は人であり、その能力の高さを示す『人的資本』、これまで構築されてきたインフラや安全な環境といった『生産資本』、農業や鉱物資源を中心とした『天然資本』などを評価したもので、その最新のランキング(2012年)によれば日本は1位。
この指標が物語るのは、今後人口が減少しても、日本は世界が求める付加価値を生み出す余力がまだある。継続して稼ぐ力がある、ということです。円が強くなった時、日本が今以上に豊かになるのです」(山口氏)
棚ぼたバブルを利用して力を蓄えることで、その後の日本経済は長期にわたり「最強」であり続けるのだ
※週刊ポスト2017年1月1・6日号