2016年シーズンも優勝を逃した球界の盟主・巨人は、陽岱剛(29)や森福充彦(30)、山口俊(29)らのFA選手を獲得するなど、久しぶりの超大型補強を行った。総額30億円もの補強は、その金額も注目を集めているが、同じポジションに多数の有力選手が積み上がるおバカ補強としても話題だ。
そうなると、巨額補強に走った挙げ句に優勝を逸してきた過去の記憶が蘇る。巨人はこれまで、オフにFAで2選手を獲得したことが7回あるが、翌年リーグ優勝に漕ぎつけたのはそのうち4回のみ。“成功率”は5割強でしかない。
補強組と生え抜き組が噛み合わないこともあれば、大物同士のポジション争いなど、不毛な闘いにエネルギーが割かれるからだ。そんな悪習の繰り返しには、巨人OBからも苦言が呈される。生え抜きとして首位打者2度を誇る篠塚和典氏はこういう。
「ファンというのは、弱くても生え抜きが頑張れば応援してくれるもの。勝負事だから勝ちを目指す姿勢は必要です。ただ、先々のことを考えると、生え抜きからレギュラーを育てないといけない。年齢的な部分もあって、FAの選手は活躍できても数年ですから」
1995年、ヤクルトから巨人にFA移籍し、その年は古巣・ヤクルトに優勝をさらわれた経験を持つ広澤克実氏も「どんなチームにしたいのか見えてこない。補強は、“自前の選手をどう育てるか”を考えてやらなきゃいけないのに、ビジョンがない」と手厳しい。
そうした指摘を踏まえ、球界のご意見番・広岡達朗氏が直言する。
「監督もコーチも、補強をすればするほど手を抜くからダメになる。結局、今の巨人軍には若い逸材を育てる能力がないんです。
これで日ハムにトレードに出した大田泰示が向こうで活躍したら大恥ですよ。大田は上背、肩、足とすべてが揃っている逸材でしたが、巨人は教え方が下手なうえ、根気がなさすぎた。育てられないから戦力に穴が空き、穴を埋めようとFAで選手を獲ってきて、それで平気な顔をしている。そんな考えで勝てるほど、プロ野球は甘くはない」
納得の指摘である。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号