「えっ! そんなことがあったんですか?」──本誌記者からの問いかけに石坂浩二(75)は驚いた様子でそう答えた。テレビ東京の看板番組『開運!なんでも鑑定団』に疑惑が浮上している。
昨年末に放送し、番組内で〈国宝級の大発見〉と宣言。国内外でニュースとして報じられた鑑定に、専門家たちから続々と異論が出ているのである。
問題のお宝は、世界に3点しかない中国の陶器「曜変天目茶碗」の“4点目”ではないかと番組で紹介された茶碗だ。番組でつけられた評価額は「2500万円」。ちなみに他の3点は日本に現存し、国宝になっている。
「曜変天目の専門家」として知られる陶芸家の九代目長江惣吉氏は、その茶碗を「光彩」「顔料」「模様」などの違いから偽物と断じた。中国陶磁考古学・陶磁史の世界的権威である沖縄県立芸術大学教授の森達也氏も「本物の可能性は低い」と指摘した。そして、長江氏のもとには、番組を視聴した中国人研究者・孫建興氏から〈是偽曜変 是現代焼制的(=これは偽物の曜変だ。現代に焼かれたものだ)〉というメールも届いている。
本誌は番組で鑑定を行なった古美術鑑定家の中島誠之助氏を直撃したもののノーコメント。テレビ東京も「鑑定結果は番組独自の見解。特にお答えすることはありません」とダンマリを決め込んでいる。
思えば『鑑定団』は昨年からトラブル続きだった。昨年1月末の女性誌に、当時、司会を務めていた石坂が画面にほとんど映らず、コメントもオンエアではカットされていたことが報じられた。番組スタッフとの確執が原因とされ、スポーツ紙やワイドショーが連日取り上げる大騒動に発展した。
結果、昨年3月末に石坂は司会を降板。そこで、今回の“疑惑”について、番組OBの石坂を直撃したところ、戸惑いつつも発した第一声が冒頭の言葉だ。以下は石坂との一問一答である。
──もし石坂さんがスタジオにいたら、こんな疑惑の鑑定は起こらなかった?
「いやいやいや(笑い)。そんなことないですよ。僕は『お宝サロン』(*)という番組をやっていて、制作会社が同じだから、心配は心配ですよ」
【*石坂は昨年4月から、テレ東版とほぼ同じスタッフが制作する兄弟番組『開運!なんでも鑑定団 極上!お宝サロン』(BSジャパン)の司会を務めている】
──目利きの石坂さんがチェックできていたら違う結果になったかも。
「いやァ、僕も多分、ダメだったかもしれないな。そこまでいくとね(笑い)」
そう話すと、石坂は足早に自宅に戻ろうとする。
──最後に『鑑定団』に対して、一言ください。
「中島さんも先輩だし。鑑定が間違っていなければいいと、心からそう思います」
古巣の“鑑定”には慎重な石坂だった。
※週刊ポスト2017年2月10日号