小池百合子・東京都知事が支持する候補者が千代田区長選で圧勝し、ついに「宿敵」である都議会のドン・内田茂都議(千代田区選出)を“討ち取った”。そして勝負どころとみるや、区長選から間髪入れずに石原慎太郎・元都知事に襲いかかり、豊洲移転問題に関し、参考人招致を決めた。さらに7月の都議選では自身が主催する「小池塾」から大量の刺客を送り込もうとしている。
森喜朗氏、石原氏、内田氏といったザ・自民党政治家を敵に回し、政治の素人集団を「刺客」に立てることで反対派を駆逐してヘゲモニー(主導権)を握る。
この戦法、言うまでもなく、かつて仕えた小泉純一郎・元首相流だ。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
「もはや小池氏のケンカのうまさは小泉氏を超えた。小泉氏は総理・総裁だったが、小池氏は自民党を追われるように孤立無援で都知事選を戦い、知事になると1人で半年も経たないうちに議会を切り崩したのだから、小泉氏以上の豪腕です」
自民党執行部はそんな小池氏を除名もできず、腫れ物に触るような扱いだ。自民党役員がこういう。
「小池旋風は安倍総理の解散戦略に大きな影を落としている。都議選で自民党が大きく議席を減らせば、東京選出の代議士たちは選挙の手足をもがれてしまう。小池新党が次の衆院選でも東京で独自候補を立てるような事態になると、議席確保は容易ではない。
そうならないように小池の党籍を残し、あくまで東京都連と小池の対立にとどめて国政に進出させないようにしておく必要がある。小池も党本部が自分を切れないとわかっているから、都議選に刺客を準備しながら自民党と手を切るとは決して言わない」
小池氏は小泉内閣の環境大臣当時に飼い始めた愛犬(メスのヨークシャーテリア)に「ソウちゃん」と名付けている。名の由来は「総理大臣」。当時、本誌の取材にそれについて触れ、「女性初の総理になるのかな」と笑いながら語ったことがある。
その「ソウちゃん」は一時、他に預けられていた時期もあったが、「今は元気に知事と暮らしている」(小池氏周辺)という。
自民党都連と本気でつぶし合いのケンカを演じながら、自民党本部とはギリギリのところで踏みとどまって決別しない。小池氏のしたたかな政治姿勢は、愛犬に「ソウちゃん」と名づけたときの野望を失っていないからかもしれない。
ちなみに今や“無敵”の小池氏自身が敗れた選挙は1992年の参院選以来、1度しかない。それが自民党総裁選である。
※週刊ポスト2017年2月24日号