将棋連盟を揺るがす大騒動に新展開だ。三浦弘行九段が対局中に将棋ソフトを使って不正行為に及んだとする疑惑について、連盟の設置した第三者委が「シロ」判定を出し、拙速に三浦九段への出場停止処分を下した責任を取って谷川浩司会長が辞任。棋士総会では他の理事たちの解任動議も提出され、三浦九段への処分を批判する反執行部派が勢いづいている。
ところが、ここにきて「あの記事は三浦九段の“勇み足”では……」(連盟関係者)と懸念される事態が起きているのだ。
問題の記事は2月7日付でウェブメディア「iRONNA」に掲載された三浦九段のインタビューだ。記事中で三浦九段は、〈私が不正をしているという噂をまき散らし将棋界を無茶苦茶にした観戦記者の小暮克洋氏だけは、許せない〉と特定の記者を騒動の“黒幕”と名指ししたのである。
「小暮さんはフリーのベテラン記者で、今回の疑惑を告発したかたちになる渡辺明竜王とも親しい。ただ、三浦九段に小暮さんの実名をあげて批判するだけの根拠があったのか。なければむしろ、反撃を受けるのでは」(同前)とみられている。
記事が出て以降、沈黙を守ってきた小暮氏を直撃すると、心境をこう明かした。
「怒りを通り越して呆れています。名誉毀損だし、こんなバカな話はない。たしかに渡辺さんの相談には乗っていました。今はっきりしたことは明かせませんが、当時(三浦九段は)限りなく『クロ』だという認識でした。渡辺さんも相当悩んでいて、最終的には(連盟の)理事に相談した。本来、渡辺さんの役割はそれだけのはずでしたが、(三浦九段への聞き取り調査を行なった)常務会に、三浦さんの要望で渡辺さんが証人として呼ばれ、告発の責任者のように扱われてしまっている」
あくまで責任は処分を下した連盟執行部(常務会)にあり、小暮氏を批判するのはお門違いとする主張だ。小暮氏が続ける。
「(記事掲載以降は)仕事にも影響が出ている。法的手段? 私だけでなく渡辺さんの名誉が守れる方法を弁護士と相談しながら考えている。将棋連盟のためにもできるだけ丸く収めたいと思っているが、真実から目を背けることはできません。私なりに名誉を守ります」
連盟に賠償を求める立場だった三浦九段が、逆に訴えられる側になれば、まさに泥仕合だ。棋界の正常化はまた遠のくことになる。
※週刊ポスト2017年3月10日号