ついに東芝の切り売りに次ぐ切り売りも最終段階を迎えている。稼ぎ頭の半導体事業の100%売却の可能性が高まり、米国のウェスタン・デジタル社や韓国のSKハイニックス、台湾の鴻海が入札に名乗りをあげている。
さらに、である。これまで巨額の損失が明るみに出るたびに、白物家電(中国・美的集団に売却)、医療機器子会社(キヤノンに売却)などが次々に切り離されても最後まで残るといわれてきた原子力部門についても、「東芝のような会社に任せていいのか」(経産省関係者)という声があがり始めている。
「2006年に『原子力立国計画』を掲げ、官民一体で原発輸出などを進めている以上、原子力事業は国策。福島第一原発の廃炉作業もある。それだけに、これまでは“原子力だけは下手に売ってもらっては困る”という話だったが、昨年末に明らかになった巨額損失などは、米国の原子力子会社に本社のガバナンスが利いていなかった証拠。本気で別のスキームを考える必要もあるのではないか」(同前)
経営基盤がかつてないほど弱っている東芝が、原子力事業を続けられるのかという不安が持ち上がるのは当然のことだろう。
シナリオとしてあり得るのは政府主導による国内の原子力関連企業の統合だ。ジャーナリストの伊藤博敏氏がいう。
「経産省は権益保持のため、日本のメーカーの原子力事業は残したい。もし仮に、東芝に原子力をやらせないということになるなら、東芝の原子力部門を切り離した上で、三菱、日立の原子力部門とまとめて『日の丸原子力』のような企業を立ち上げる方向を探る可能性があります」
世界的に見ても縮小市場である以上、そうした統合再編が囁かれること自体は不自然ではない。ただしそうなると、東芝に残る事業は火力発電や上下水道インフラ、エレベーターくらい。
「半導体のような利益幅は望むべくもないが、インフラ事業などは安定した収益が出る。もはや、エレベーターの会社として生き残ればいいじゃないか」(前出の経産省関係者)
重電から家電まで幅広い事業を持ち合わせたコングロマリット企業の“看板”は少なくなるばかり。
※週刊ポスト2017年3月17日号