「実は年々“新”や“春”と冠のつく春野菜が増えています。これは流通網の整備や生産での創意工夫の賜物。野菜の旬は種類によって違いますが、総じて多くの野菜にとって“春が第二の旬”になってきたといえます。つまり、この時期出回る野菜は、どれを食べてもおいしいのです」
こう話すのは、大田市場の仲卸で野菜の目利き・手塚邦彦さん。プロが肌で感じるほど野菜事情は変貌している。
そんな変化の一方で、「おいしい野菜はゆっくり着実に育った野菜」との原点にこだわるのが、作物の研究者から農業者へ転身した西村和雄さん。野菜の健全さは、色や形に表れ、味を見極める目安になると教えてくれた。
「健康に育った野菜は、根が丈夫で葉脈も細かく、形も左右対称。消費者が喜ぶからと、肥料過多で色づきを濃くしようとするケースもありますが、この時期の野菜は、新緑のように淡いのが本来の色なのです」(西村さん)
葉野菜は葉を外側から順にはがしていくと、放物線を描くように葉の大きさが違っている。外側から3分の1あたりの葉が最も大きく、そこから中心によるほど徐々に小さくなる。これは、正しく施肥を行った証なのだ。
葉を裏返してみて、葉脈が細かくはっきりしていて左右対称かをチェック。また、葉の色は、濃いものより薄めの新緑色を選んで。根野菜も、見た目でおいしいものを見極められるといい、養分根と呼ばれるひげ根が一定の間隔で、規則正しく並んで生えているものが美味という。
このように、味のいい野菜には、姿形のよさに一定のルールがあるのだ。では、こうした目で選んで持ち帰ったおいしい野菜を、家庭でどうやって長持ちさせればよいのだろうか。
「野菜はその種類によって、適した保存温度が違います。野菜室よりさらに温度の低い冷蔵室での保存が向く野菜もあれば、常温保存が適しているものも」とは、野菜保存に詳しい徳江千代子さん。野菜は、その特性を知れば知るほど、もっとおいしく食べられるというわけだ。野菜を丸ごと保存する際の適温適所を抑えておこう。
きゅうり、しょうが、じゃがいも、さつまいもは、10~14℃の冷暗所で。トマト、オクラ、ピーマン、ナスは、野菜室5~10℃の野菜室。さらに、キャベツ、レタス、セロリ、カブ、ブロッコリー、パセリ、にんじん、ほうれん草、ニラ、大根は冷蔵室で0~5℃で保存しよう。
※女性セブン2017年3月23日号