これまで、数々のタレント暴露本が芸能界を震撼させてきた。タレント本収集家としても知られるプロインタビュアー・吉田豪氏はいう。
「スポーツ選手の暴露本にも名著は多いんです。元プロ野球選手の愛甲猛さんの『球界の野良犬』(2009年・宝島社刊)は、カラっとした馬鹿話が痛快ですね」
愛甲は横浜高校時代には「甲子園のアイドル」と呼ばれたイケメン選手。プロ入り後、ロッテや中日で活躍した愛甲は、プロ引退後に俳優デビューや失踪事件を起こすなど波乱万丈な人生を送った。吉田氏が愛甲氏の著書の魅力を語る。
「まず、本の帯が凄い。〈暴走族、アンパン、失踪、暴力、野球賭博、筋肉増強剤〉って、これが野球の本かと(笑)。
高校時代からシンナーとかボンド(接着剤)に明け暮れていて、その描写が今では考えられない。
今はドラッグに触れる場合は「決してマネはして欲しくない」とかエクスキューズを入れますが、それが全くない。
〈目の前に高層ビルが建った。逗子の山に新宿副都心のようなビルが乱立する〉
と、幻覚症状を緻密に描写するだけ。むしろ楽しさすら感じますから(笑)。
せっかく長嶋茂雄さんが登場するのに、触れるのは〈長嶋さんは大きな屁を放った〉っていうエピソードだけですから(笑)」
※週刊ポスト2017年3月24・31日号