大相撲では、年に6回、本場所前に新弟子検査が行なわれる。とくに年度末で学校の卒業などのタイミングと重なる3月場所は角界では「就職場所」と呼ばれ、1年で最も入門者が多くなる。過去、若貴ブームの時は1992年春場所に151人もの入門希望者が検査を受けたが、その後は減少を続けたが、この3月は昨年より10人多い56人もの新弟子力士がデビューした。そのうち中卒は昨年の20人から急増して33人にのぼった。
その一方で、少子化が進み、どの部屋も新弟子の確保には頭を悩ませている。全国の後援者から情報を集め、体のデカい中学生や高校生がいると聞けば、親方自らあちこちへ足を運ぶ。
この春、最多の7人が入門したのは佐渡ケ嶽部屋だが、先代親方(元横綱・琴櫻)のスカウト口上は半ば伝説化している。
「琴櫻関は足のサイズが小さいことで知られていたんですが、その欠点を新弟子勧誘に利用した。訪問先では帰る時に、玄関に脱いである新弟子候補の少年の靴を見て、“この足のサイズなら横綱間違いなしだ。元横綱の私の足と比べてみてください。こんな足の大きい子は見たことがない”と持ち上げる。新弟子候補やその親は、ついその気になってしまうわけです(笑い)」(後援会関係者)
新弟子は両国国技館内にある「相撲教習所」へ半年間通う(外国人力士は1年)。学生出身力士は、関取になった時点で免除される規定になっている。
「教習所では基本実技はもちろん、相撲の歴史や一般常識、書道、相撲甚句などの教養科目の授業を受ける。実技は教習担当の親方や幕下力士が受け持ち、教養科目は専門の先生が来る。教室で寝ている新弟子を竹刀でたたき起こす係もいますね。教習を終えると、関取の付け人になっていく」(担当記者)
※週刊ポスト2017年4月28日号