臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、クールに見える菅官房長官の心の内を分析。
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加計学園問題をめぐり勃発した「前川の乱」。事の発端は「総理のご意向」などと記された文書。作成されたとする文部科学省は「確認できなかった」とし、菅義偉官房長官も「怪文書」と切り捨てた。だが、そこで「あったものをなかったと言うわけにはいかない」と前川喜平前文科事務次官が証言した。
ところが、連日メディアが大騒ぎした森友学園問題に代わるのかと思いきや、「乱」と名付けられたほどの騒ぎは見られない。問題を前に、こう言っては不謹慎なのだが、登場してくる人物が森友学園問題の時よりインパクトに欠けるのだ。
強烈なキャラを炸裂させた籠池夫妻に感情的になる稲田防衛相、印象操作を連発する安倍首相になんとも不可思議な昭恵夫人…。絵面だけ見ていても飽きなかったものだ。
これまで、中心人物となっているのは前川氏と菅官房長官。グレーや紺のスーツで、色的にも地味なこの2人に共通するのは、慎重な言葉選びと淡々とした話し方や、仕草・身振りの小ささとバリエーションの少なさ。安倍内閣では数々の失言大臣たちが登場し、話題を提供してくれたのだが、そんな失言閣僚や議員とは一線を画し、場に応じたセルフコントロールが上手いのだろう。
そんな中で印象的だったのが、菅官房長官が笑みを浮かべながら発言した前川氏への痛烈な批判だ。前川氏の出会い系バー通いについて、「強い違和感を覚えた」と厳しい口調で薄ら笑いさえ見せたのだ。会見の場で、このような個人攻撃をすることなど滅多にない菅官房長官だけに、こんなにあけすけに感情を見せることがあるのだなと思ったものだ。
菅氏のイメージといえば辣腕、実直、堅実、冷静沈着。永田町で今、最も怖い政治家という噂さえあるらしい。確かに、官房長官という役割を演じる能力が高く、安倍内閣の中では、自分の振舞いが他人にどのように影響を与えるのかをよく知っている政治家だろう。それだけに、毎日の会見では言葉以外で印象操作を巧みに行っている。
例えば菅氏は、記者たちからの質問を聞く時、あまり顔を上げない。質問している記者の顔をほとんど見ないこともある。また、うなずくこともほとんどない。だが自分が答えている時は、相手の反応を見るために聞いている時よりも相手を見るのだ。