若い女性の貧困問題は、中国でも問題視されているようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国で人気のコミュニケーションツールとして知られる「QQ」。そのなかで行われた一人の新聞記者と23歳の女性とのやり取りが話題となっている。
女性:痛い。取り出した後は虚脱状態。もう手術台からおりこともできない。
記者:そんな、大袈裟な……。だって、医者が施術したんでしょう?
女性:検査した医者が手術したの。病院じゃないって。
日時は今年の3月2日、記者は『看看新聞』の記者で、女性は卵子の摘出手術を行った23歳の女性だ。
記者がこの女性とQQでやり取りした理由は取材。そのテーマは、違法な卵子売買の実態であった。上記の女性は、実際に卵子を売った当事者である。
記事は3月29日付で発表されているが、そのタイトルは〈金に困った女性が卵子の闇販売を行う 数秒間で20個の卵子を売り報酬は2万5000元(約40万5000円)〉だった。
中国の一部ではいま、こうした闇ビジネスが横行しているという話を聞きつけた記者がその実態を調べ、とうとう卵子を売った本人に直撃したという話である。
女性は1994年生まれで、現在は大学に通っているという。売買にかかわった理由はタイトル通り「生活の困窮」だった。ネットのサイトにいくつもの呼びかけがあり、その一つに応じたという。
タイトルでは数秒間で大金を手にしたように書かれているが、実際には何度も注射に通わなくてはならず、術後の痛みも酷いと女性は訴えている。
こうしたビジネスが実際にどのくらい広がっているかは定かではないが、ビジネスとして成立している以上、もはや大きな社会問題であることは想像に難くない。そして、やはり心配されるのが、こうした闇病院での手術では、事故もたくさん起きているのではないかということだ。