発売から39年の昨年、大幅リニューアルをした『黄金の味』(エバラ食品工業)。年間4000万本を出荷する人気商品はなぜリニューアルに至ったか。家庭での焼肉文化を支えてきたおいしさの秘密に迫る。
日本の家庭に焼肉文化を広めてきたエバラ食品工業。1970年代には飼料の改良や流通システムの発達とともに肉の品質が向上した環境のもと、おいしい肉をさらにおいしく味わえるタレとして1978年に『黄金の味』が誕生した。
発売から39年が経った昨年、初の大幅リニューアルを行った背景には、急速に進む社会変化への対応があった。近年、より良質なたんぱく質源としてポジティブなイメージが浸透しつつある食肉市場では、全ての世代で肉の消費量が上昇。社会環境の変化に合わせ、より多くの人に満足してもらえるようタレを進化させるには最適なタイミングだった。
リニューアルに際して注目したのはユーザーからの声。『黄金の味』は、原料の3分の1にフルーツピューレを使用することで、さわやかな甘さと自然なとろみ、食べ飽きない味わいを実現した商品だ。ところが、年に数件程度ではあるものの一部のユーザーから、「以前よりとろみが減った」という声が寄せられるようになった。
調査をしたところ、ピューレの主原料であるりんごの品種や品質が時代とともに変化していたことがわかった。そこで、ピューレの生産工程を見直し、試行錯誤した結果、従来品の約2倍のとろみと舌触りのある繊維感をもつ新ピューレを生み出すことに成功した。同時に原料のりんごを100%国産品に変更し、安全性も高めた。
約2年におよぶプロジェクトでは、100回以上の試作を繰り返すなど味づくりにトコトンこだわり、試作に使用したピューレは20トン以上にもなったという。果実のコクととろみが増した新しい『黄金の味』は、人気の赤身肉とも好相性。果実の繊維が肉とよくからみ、のみ込む瞬間まで味わいが楽しめる。
共働き世帯やシニア層の増加、世帯人数の減少といった変化に合わせ、容量や容器も変更した。従来の400gの販売を終了し、3~4人世帯で使い切りやすい360gと、ヘビーユーザー向けの480gを新たにラインナップ。また、持ち運びの負担を軽減するため、360g以上の商品にはペットボトル容器を採用した。とはいえ、従来品がもつ瓶ならではの高級感や商品イメージを損なわないよう、ペットボトルにも「ダイヤモンドカット」と呼ばれる凹凸を入れ、デザイン性の高いものにした。
さらに、リニューアルで甘口・中辛・辛口の味の差をよりはっきりさせたところ、特に辛口の売り上げが好調に推移。辛口ブームやおとなの世代の増加を背景に、さらにニーズが高まりそうだ。ヘビーユーザーからも格段においしくなったと評判だ。
※女性セブン2018年4月12日号