古来の地名には、その土地の特徴や大災害の歴史が秘められていることが多いという。
「自然災害は防げなくても、被害を最小限にすることはできます。その方法の1つが、地名の由来を調べることです」
とは、日本地名研究所の菊地恒雄さんだ。地名にはたいてい、その土地の自然や地形が“記号”として組み込まれているため、地名の由来をひも解けば、過去にどんな災害が起こったのかがわかり、あらかじめ備えられるというわけだ。特に、動物の読み方をする地名には、過去に災害が起こった場所が多いという。
「例えば、『サル』がつく地名。猿が多く生息していた地という意味もありますが、『崩れさる』を語源とする場合も。近くに崖地がないか調べるといいでしょう。また、昔は崖を『岸』と呼んでいたため、『キジ』の名がつく地名も崖地だった可能性があります」(菊地さん)
このように、危険な場所のサインは地名として残り、後世に伝えられてきたのだが、近年、市町村合併や土地開発により、新たな地名がつけられ、“危険地名”が失われることも多い。
「茨城県常総市は2015年の豪雨で被災しました。常総市は市町村合併で名前を変えたのですが、かつては、『水海道市』と呼ばれ、低湿地にある集落を示していました」(菊地さん)
◆名付け直された地名から危険のサインを読み取る
地名を新たにつけられると、先人が残したサインがわからなくなる。しかし、新地名でも、危険サインを読み取る方法はあると、地理空間情報アナリストの遠藤宏之さんは言う。
「例えば、新興住宅地などによくつけられている『〇〇ヶ丘』や『〇〇台』、または『寿』『八広』『緑』『日の出』『若葉』など縁起のいい印象を与える地名は、元の地名の悪いイメージを覆すために、あえて名づけられるケースがあります。つまり、以前の地名は危険地名だった可能性がある。実際、2011年の東日本大震災では、あさひ台、桜台、松が丘、若葉町などの埋立地が地すべり被害に遭いました」(遠藤さん)
ただし、そうでないケースも多い。地名はあくまで、危険な場所かどうかを知るためのきっかけと心得よう。
「役所で大規模盛土造成地マップを見せてもらったり、図書館で明治時代以降の地図を見れば、過去の地形がわかります。田んぼがあった場合、田は低い場所に水を引くため、洪水時は浸水する可能性があります。地名を“気づき”にして、過去の地図で調べることが防災上、大切なことなんです」(遠藤さん)
あなたの暮らす場所の地名も調べてみてはいかがだろう。
※女性セブン2019年9月12日号