ビジネス

東京駅の「赤レンガ駅舎復原」から10年 文化財を残していくことの難しさ

復原された東京駅の赤レンガ駅舎は八角形だった屋根が丸型ドームへと戻された(2021年撮影:小川裕夫)

復原された東京駅の赤レンガ駅舎は八角形だった屋根が丸型ドームへと戻された(2021年撮影:小川裕夫)

 歴史的な建造物の保存・修理には、失われたものを、かつての姿通りに新しく作る「復元」と、始めの姿が改造されたり変化してしまったものを元の姿に戻す「復原」がある。聞き慣れない「復原」は、3つしかない駅の重要文化財のうち2つ、東京駅と門司港駅で実施された。ライターの小川裕夫氏が、「復原」ならではの難しさと、日常的に使用される駅としての選択についてレポートする。

 * * *
 2024年に発行される新一万円札の裏面には、東京駅の赤レンガ駅舎がデザインされる。東京の玄関でもあり紙幣にも印刷される東京駅は、間違いなく日本を代表する駅舎といえるだろう。赤レンガが美しく映える東京駅は、2003年に重要文化財の指定を受けた。

 重要文化財とは、日本国内にある有形文化財のうち、文化庁が芸術的・学術的に高い価値があると判断したモノを指す。重要文化財に指定されると、文化財保護法の対象となる。そして、それらの保護・保存には公的に補助金が交付される。

 文化財に指定されたことは、赤レンガ駅舎の美しさが広く認められた証でもある。文化財に指定されると、勝手に修理などができなくなる。なぜなら、修理によって形や色が変わってしまう可能性があるからだ。しかし、赤レンガ駅舎は重要文化財に指定された後に少しだけ形を変えている。

 2012年、赤レンガ駅舎の八角形屋根は大正時代に竣工した当時の丸型ドームに戻された。新一万円札の裏面に描かれる予定の東京駅赤レンガ駅舎も丸型ドーム屋根になっている。

 今年は赤レンガ駅舎が復原されてから10年という記念すべき節目にあたる。歴史・文化遺産などを以前の姿へ戻す作業を表す言葉には、復元と復原のふたつがある。どちらも「ふくげん」と読み、意味も似ている。しかし、厳密には2つは異なる言葉で、作業の中身も少し違う。

 大まかに説明すると、復元は構造物が現存しない。また、資料や図面などは失われているケースが多い。たくさんの研究者がそれまでの知見を活かして再現を試みる手法を指す。時代とともに研究が進み、それまでの通説が覆されることもある。そのため、復元した何十年後に「実は、こういった建物ではなかった」と判明する大どんでん返しが起きることもある。

 一方、復原は構造物が現存するが、歳月を経て元の姿から改造されるなどの手が加えられているので、それを資料や図面を当初の姿に再現する作業を指す。

関連記事

トピックス

「夢みる光源氏」展を鑑賞される愛子さま
【9割賛成の調査結果も】女性天皇についての議論は膠着状態 結婚に関して身動きが取れない愛子さまが卒論に選んだ「生涯未婚の内親王」
女性セブン
勝負強さは健在のDeNA筒香嘉智(時事通信フォト)
DeNA筒香嘉智、日本復帰で即大活躍のウラにチームメイトの“粋な計らい” 主砲・牧秀悟が音頭を取った「チャラい歓迎」
週刊ポスト
『虎に翼』の公式Xより
ドラマ通が選ぶ「最高の弁護士ドラマ」ランキング 圧倒的1位は『リーガル・ハイ』、キャラクターの濃さも話の密度も圧倒的
女性セブン
羽生結弦のライバルであるチェンが衝撃論文
《羽生結弦の永遠のライバル》ネイサン・チェンが衝撃の卒業論文 題材は羽生と同じくフィギュアスケートでも視点は正反対
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
撮影前には清掃員に“弟子入り”。終了後には太鼓判を押されたという(時事通信フォト)
《役所広司主演『PERFECT DAYS』でも注目》渋谷区が開催する「公衆トイレツアー」が人気、“おもてなし文化の象徴”と見立て企画が始まる
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン