耳が不自由ながらも、筆談を駆使してナンバーワンホステスに上り詰めた斉藤里恵さんは、大きな話題となったが、ここにもうひとり、「2代目筆談ホステス」ともいうべき女性がいる。早乙女由香さん(24)は、今日も女子大生、母、ホステスと三足のわらじを履く忙しい毎日を送っている。
早乙女さんとの取材は、質問も返事も紙に書いたやりとりだ。ホステスを始めた理由を聞くと、「1歳半になる息子のために経済的に自立したかったから」と答えてくれた。
生まれつき耳が不自由な由香さんだが、半年ほど前から東京・銀座の『CLUB M』でホステスとして働いている。接客業だけに「大変なのでは」と、心配をすると、「筆談だと周りの人に聞かれる心配がないから本音トークができます」とニッコリ。しかしその笑顔の裏には様々な苦労が隠されている。
聴覚障害というハンディだけではない。一時は結婚も考えていた彼氏から、DVを受け続ける。すでに妊娠していた彼女は散々悩んだあげく、23歳のとき、出産を機に彼と別れた。大学生だった彼女は、妊娠中に、都内大学の児童心理学科に編入学した。
「子供ができてからは、勉強したい、子供に言葉を教えたいと思うようになったんです」(早乙女さん)
現在は女子大生、母、ホステス、と三足のわらじを履く忙しい毎日。さらに、テレビ出演やファッション誌『EDGE STYLE』(双葉社)で連載を持つなどの「書く仕事」もこなしている。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2010年9月3日号