「ウイスキー=中高年のお酒」というイメージを払拭させてハイボールが大ブームとなっているが、奇しくもウイスキー業界と同じ悩みを抱えていたのが、近年若者の日本酒離れが進んでいた、清酒業界だ。
黄桜・営業推進部係長の辻洋子氏が語る。
「2009年秋以降、もっと幅広い世代に日本酒を広めたいと模索していたところ、巷ではウイスキーをソーダで割ったハイボールが大変な人気を集めていました。そこで、日本酒もソーダで割ってみたらどうかという意見が社内から出てきたんです。
日本酒の水割りのように水っぽくなりはしないか、日本酒本来の香りが薄まらないか、など懸念もありましたが、直営のレストランで試作品を出してみると『呑みやすい!』『日本酒にこんな呑み方があるなんて新鮮!』と、好評だったんです。そこで、本格的に商品開発を進めました」
炭酸で割ることで、日本酒はあまり合うイメージのなかった揚げ物や味付けの濃い料理ともよく合うように。晩酌でビールや日本酒を呑んでいた人からの支持を受け、同社の『日本酒ハイボール』は今年3月の発売から1か月で、当初の予定の2倍以上を売り上げた。
「日本酒にはアミノ酸が入っていて、料理の旨みが引き出されます。そこが他の醸造酒ベースのハイボールとは異なる、日本酒ハイボールならではの特徴ですね」(辻氏)
アルコール度数を8%にすることで、あまり日本酒を呑まなかった30-40代の女性にも浸透。“ハイボール”の昭和なイメージを意識して、商品ボトルにレトロなデザインを採用したことも、女性人気を獲得した勝因だろう。
※週刊ポスト2010年9月10日号