今年はサンマの不漁が大きく報じられた。気候の影響が挙げられたが、乱獲も実は影響していたのだ。では誰が乱獲しているのか――背景には、近年の中国などでのサンマ人気、そしてそれを狙ったロシアや韓国船の乱獲がある。今や、サンマを獲り、食べるのは日本人だけではないのである。サンマは中国、台湾、韓国、北朝鮮の人々にとっても、安くて美味の魚として人気が出ている。
中国では、サンマは日本と同じく「秋刀魚」と書き、「チュウタオユー(quidao yu)」と読む。北京にある三源里菜市場では、冷凍サンマが3匹で8元程度(約100円)で売られている。もっと大衆的な商店では、おおよそ1尾10円程度の価格で売られている所もあるという。遠くは、雲南省の中華料理屋においてサンマ料理がメニューにあったという情報もある。
もともとは、台湾に持ち込まれ食されるようになったものが、美味で手軽な値段であったため、中国全土に広がったようだ。ちなみに昨年は、日本からも700トンほどが冷凍コンテナに積まれ、輸出されている。
こうした中国での需要に目をつけたのがロシアである。ロシアの大型漁船が、北方領土付近のサンマを獲り始めたのだ。かくしてサンマは乱獲されるようになったのである。
取材・文/山田吉彦
※週刊ポスト2010年9月10日号