世界中の株式市場で軟調な展開が続いているが、こうした時こそ「割安な優良株に長期投資」するスタンスが有効だとされる。だが、それは大いなる誤解だというのは、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』などの著作で知られる作家・橘玲氏だ。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏のように「割安な優良銘柄を長期保有する」スタイルは、日本でも多くの個人投資家の金科玉条とされている。実際に、日本株に長期投資している投資家も少なくないだろう。しかし、橘氏はこういう。
「FXのような短期勝負ではなく、『長期投資ならギャンブル性が低いのでは』などと考えがちだが、実はそこに落とし穴があります。考えてもみてください。明日の天気と1年後の天気はどちらが予想しやすいでしょうか。先が読めないという意味では、長期投資のほうがよほどリスクは高くなるのです」
たとえば20年前に日本株に投資をした場合、株価はマイナスに沈んだまま。日経平均株価などのインデックスですらそうなのだから、これが個別銘柄の場合はさらに悲惨なケースも多い。企業が倒産するなどして、投資した資金がゼロになってしまう恐れすらある。
「だったら中国やインドといった成長が期待できるマーケットを狙えばいい、という反論もあるでしょうが、人気の投資先である分、株価がすでに割高に評価されている可能性もあります。
結局、“バフェット流”の個別株への長期集中投資で勝てるのは、よほどの『天才』か『まぐれ』しか考えられない。100人でジャンケンをすれば1人は必ず勝ち残るように、市場で勝ち続けられる人は確かにいます。しかし、凡才がそれを実現するのは、やはり無理な話ではないでしょうか」(橘氏)
※マネーポスト2010年9月号