牛乳メラミン混入事件や、毒ギョーザ事件……。中国企業が起こした不祥事は数多い。これまでに中国を揺るがした不祥事を中国株の専門家、グローバルリンクアドバイザーズの戸松信博氏に教えてもらった。
まずは昨今の主な中国企業の不祥事について。
「02年には欧亜農業(ユーロアジアアグリ)が粉飾決算で株式売買停止となったり、陽光生態科技という肥料メーカーが大幅な増収増益見通しを示しながら、工場用地取得が政府に許可されなかったという一方的な理由で、逆に大幅減益に転じたこともありました。
農業大手として有力視される超大現代農業でも、過去には会計監査の承認を得ずに決算報告を行ったり、株価高騰時に経営トップ自らが持ち株を売却するという身勝手な振る舞いも見られました。
不祥事で記憶に新しいのが、家電量販店大手の国美電器です。同社の創業者が贈賄やインサイダー取引の疑いで逮捕され、10年5月には有罪判決を受けています。最近でも、ガス会社の新奥燃気の経営者に贈収賄の疑惑が持ち上がり、株価が急落するという事態が起きています」(戸松氏)
もちろん、日本企業でもこうした不祥事は起こりがちだが、特に中国では、国有企業ではなく、民営企業に不祥事が多いのだという。それについては「民営企業に対してはメディアが容赦ない」という事情も考えられるというのだ。
「私が乳製品トップの蒙牛乳業を訪問した時の話ですが、民営企業である同社は、最近になって国有企業の中糧集団から出資を受けています。そのメリットを尋ねたところ、『国有企業が株主になるとメディアが優しい』という答えが返ってきました。もちろん、同社に何か後ろめたいところがあるわけではないでしょう。ただ、同社は08年に有害物質メラミンの牛乳混入問題で業績を下げた経験もあり、実感からそのようなコメントがでてきたのではないでしょうか」(戸松氏)
※マネーポスト2010年9月号