預けたお金をプロが運用してくれる投資信託。自分が投資信託を買うとき、その投資信託が資金が純増している人気投信であれば、かなりの安心材料になるだろう。とはいえ、純増=人気とはいえても、純増=安心とはいえないのだという。
投資信託事情(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン発行)の協力のもと、過去1年間、毎月資金が純増している投資信託を調べてみた。
2009年6月末から2010年5月末の間、毎月、設定額が解約額を上回ったファンド(投資信託)の本数は、67本。全部で3739本のファンドが運用されていることから考えると、毎月、資金純増をキープしているファンドというのは、本当にごく一部に過ぎないということになる。
では、その数少ない人気ファンドには、どういうタイプがあるのだろうか。Joynt代表の鈴木雅光氏が解説する。
「まず圧倒的に多いのが、外債ファンドです。全67本のうち36本が、投資対象地域こそ異なるものの、外国債券を主な投資対象としています。加えて2本が国内債券を主要投資対象としており、国内外の別を問わなければ、債券に投資するファンドが全体の56%を占めています」
とはいえ、資金純増投信の傾向から、日本の投資信託が抱える問題点が透けて見えてくるという。
「まず、ファンドのタイプに大きな偏りがあります。海外に投資するファンド中心であるのはいうまでもありませんが、その外債ファンドの中身を見ると、より高い金利収入と引き換えに、リスクの高い債券を組み入れているタイプが中心となっています。『ブラジル・レアル』、『ハイ・イールド』、『高金利通貨』といった名称の付いたファンドです。
そもそも、ブラジル・レアルなどという通貨は、外国為替市場における取引規模が極めて小さい。したがって、為替レートのブレも大きくなりがちです。仮に、ブラジル・レアルなど高金利通貨建ての債券を組み入れて運用しているファンドに解約が殺到したら、その解約売りにともなって、大幅な通貨安を招く恐れもあり、ファンドの基準価額の急落にもつながります。特定のセクター、投資地域、あるいは投資対象にばかり資金が集中するのは、決して良いことではないのです」(鈴木氏)
もちろん、「1年にわたって毎月、資金が純増しているのだから、そう簡単に解約が殺到するはずがない」という意見もあるだろうが、一旦、解約が発生して資金が流出気味になると、ファンドの純資産残高はあっという間に萎んでいく。過去、この手の事例はいくつもあった。代表的なものが「お化け投信」といわれ、全国165万人が購入していた「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」(通称・グロソブ)だ。
「一時は純資産残高が5兆7000億円を上回ったグロソブも、今では解約増による資金流出に苦しんでいます。同ファンドの純資産残高は、2008年8月に5兆7685億円でピークをつけた後、7月13日時点では3兆5000億円程度まで減少した。もちろん、この間の円高による為替差損分もありますが、わずか2年間で2兆2000億円もの資金が消えたことになります」(鈴木氏)
つまり、いくら1年間にわたって資金の純増が続いているとしても、安心はできないということだ。
※マネーポスト2010年9月号