民主党マニュフェストのひとつ「高校授業料の無償化」が今年の春から始まった。政府と文部科学省は、適用対象が『先送り』状態だった朝鮮学校にも、いよいよ適用する姿勢を見せている。朝鮮高校とは金正日を指導者とする朝鮮労働党の下部組織、朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)が運営する教育機関である。果たして朝鮮高校に無償化の資格があるのか。「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)代表の李英和氏が緊急提言する。
朝鮮総連は、自身の公式ホームページ上で、堂々と次のようにうたう。
朝鮮学校は「朝鮮総連が運営する正規の教育体系」(就学前教育、初等教育、中等教育、高等教育)であり、その頂点に立つ「朝鮮大学校は共和国[北朝鮮―筆者注]の権威ある海外大学」「民族教育の最高学府」「民族教育のシンボル」であると。
これだけ見ても、朝鮮労働党・朝鮮総連・朝鮮学校は「三位一体」で、上意下達の「支配―従属関係」にあることがわかる。北朝鮮は朝鮮学校を「首領様の学校」と標榜し、朝鮮総連の「生命線」と位置づけている。
したがって、その教育理念は、北朝鮮のそれと寸分と違わない。首領絶対制を基本理念とする思想教育である。
実際、朝鮮学校の教科書は、労働党の検閲と承認を経て、総連中央本部の教科書編纂委員会が作成する。正規科目の「日本語」教科書も例外ではない。
外向けには、朝鮮総連は「日本の現状に合わせた教育」なるものを盛んに標榜する。が、その内実たるや「6、3、3、4」の学年制だけにすぎない(朝鮮総連公式ホームページ「民族教育」参照)。必修科目「現代朝鮮歴史」が思想教育の中核を担う。朝鮮高級学校(1~3年)の教科書は、平均して100回以上もの金日成父子の記述であふれる。
まさしく「洗脳教育」である。
問題は教育内容だけにとどまらない。朝鮮労働党と朝鮮総連による学校支配は学校運営にもおよぶ。
校長と教員の人事全般は、学校や父母会ではなく、朝鮮総連中央本部が決める。そもそも、校長は、同時に朝鮮総連中央本部の中央委員を兼ねている。
ようするに、朝鮮労働党の承認を得た大幹部なのである。
ところが、無償化適用の可否に関して、文科省は、朝鮮学校の教育内容や学校運営について「判断材料とすべきでない」との立場をとる。学校法人の認可・監督権限は都道府県にあるから、という理屈である。
文科省と都道府県が互いに監督責任を押しつけ合う構図だ。しかし、文科省が教育内容を問わないのは奇妙を通り越して「異常」である。
魚を売らない魚屋と同じで、文科省の存在意義自体が問われる。
※SAPIO2010年9月8日号