NHK『ゲゲゲの女房』で一躍注目を集めた漫画家・水木しげる氏と布枝さん夫妻。そんな夫婦へのインタビューを重ねたドキュメンタリー番組『しげると布枝』(2010年3月にNHKで放送)で、ディレクター兼聞き手を務めた作家・戸井十月氏が、リアル水木夫婦が語った珠玉の名言の数々を紹介する。
「あれだけたくさん描いても描いても否定されて……しかも食べていけない時なのに、自分自身に恥じない、その意気込みの、迫力たるやなかった。『俺はこれで生きるしかない』という覚悟が伝わってきて、私は感動したんです。その姿を思うと、いまでも胸が熱くなります」
――駆け出し時代、ひたすら机に向かっていた夫の後ろ姿について、布枝さんの言葉。
「金持ちになっても、大したことはない。あまり幸せじゃないよ。金持ちになったからって、ボタ餅が4つ食えるとかってわけじゃない。どうせ3つしか食えないんだから」
――『ゲゲゲの鬼太郎』ヒット後の半生を振り返った、水木氏の言葉。
「あの当時のことは、いまにして思うと懐かしいです。得難い体験ですしね。悲惨とは思えないです。むしろあの頃のほうが良かったと思うこともありますよ」
――貧乏時代を振り返った、布枝さんの言葉。
「本当にいいご縁をいただいたと思っています。そりゃ生きていればいろいろありましたが、主人に対する気持ちは揺らいだことはありません。不動ですよ、いまでも」
――50年の夫婦生活について、布枝さんの言葉。
※SAPIO2010年9月8日号