連日20%を超える視聴率をたたき出したNHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』。漫画家・水木しげるの妻役のヒロインを演じたのは女優の松下奈緒(25)。だが、なぜ松下をヒロインに抜擢したのか? NHKチーフ・プロデューサーの谷口卓敬氏が語る。
「普通、ドラマの主人公というと、自分が積極的に行動したりアクションを起こしたりして、物語が進んでいきます。しかし、このドラマは、決してアクティブではなく、言ってみれば『ただそこにいる』『あるがままを受け入れる』というキャラクターです。
ですから、かすかな表情の変化や立ち居振る舞いだけでじんわりと『いいな』と感じさせるような女優でなければならない。それに松下さんはぴったりだったのです」
最終的に決め手となったのはどのようなことだったのか。谷口氏が続ける。
「もちろん、彼女が演じたドラマを見ていて、いい女優だなとは思っていました。でも、決め手になったのは、民放で長寿番組ともなっているある番組に松下さんが出ていたのを見たことなんです。
それまで、ドラマで見る松下さんは、『洗練』『都会的』『理知的』なイメージがあったのですが、そのトークからは、実は『素朴』で『自然』な、飾らない方なんだなと感じました。ピピッと来ましたね。
だから、物質的には貧しい生活を送っていても、『夫を信じる力』とか『耐える力』を持っていて、豊かな心がある――そんな雰囲気を自然に醸し出してくれるのだと思います」
※SAPIO2010年9月8日号