有権者にペコペコ、マスコミにペコペコ、他国にペコペコ。必ず語尾は「~させていただく」。最近の総理は、すぐにへりくだる。おまけに、モツ焼き屋に行ったりラーメン屋に行ったりと庶民派をアピール。しかし、そんな「小市民宰相」に国を引っ張っていけるのか。今こそ、昭和の総理の「態度のデカさ」を見直したい。
『態度がデカイ総理大臣 吉田さんとその時代』(バジリコ刊)の著者、早川いくを氏は、1947年、ラジオでの年頭の挨拶が印象深いという。吉田茂総理はこういった。
「労働攻勢、デモなどを行ない、社会不安を醸成する者がいることは、心外にたえない。……かかる不逞の輩が、わが国民中にあるとは信じがたい」
正月早々、国民を「不逞の輩」呼ばわりである。極端に「上から目線」を嫌う今の日本人をスリリングな気分にさせるほど、態度がデカイ。実際、この失言をきっかけに、日本の労働運動史上最大規模の二・一スト(※)が計画されたのだから恐ろしいが、「気に入らんモンは気に入らん」といわんばかりの悪役ぶりには、ある種の清々しさすら感じる。
(※)「不逞の輩」発言に反発した全官公庁共闘が賃上げを求めてゼネラル・ストライキの実施を決定。民間の組合も合流し47年2月1日までの無期限ストライキを通告した。GHQが中止命令を発したため組合側はストを中止した。
※週刊ポスト2010年9月17日号