「ペット禁止」を前提に借りたマンションだったのに、急に変更された場合、どうすればよいのか――弁護士の竹下正己氏に聞いてみました。
【質問】
子供にアレルギー喘息があるため、「ペット禁止」のマンションを借りたのですが、入居して間もなくこのきまりが変わって、ペットを飼ってもよいことになりました。子供のことを考えて転居するしかありませんが、釈然としません。管理会社に引っ越し料などを請求することはできるでしょうか。
【回答】
ペット禁止が契約条件としてあったか、また、お子さんに動物アレルギーがあることが賃貸人に告知されていたかという点がポイントです。ペット禁止という話がマンションの管理状態の説明にとどまれば、契約の条件とまではいえず、その後変更になっても、違約にならないこともあり得ます。
例えばマンション一室の持ち主から賃借したとすれば、ペット禁止が明確に約束として保証されない限り、契約時点の状態を説明したにとどまると解されます。ペット禁止の維持は、その賃貸人が決めることではなく、管理組合などで手続きを経て決定されるので、約束できないからです。その場合、契約時点で、ペット飼育解禁が予想できたのに、虚偽もしくは不十分な説明をしたという場合以外、責任は問えないと考えます。
しかし、賃貸人がマンション一棟を賃貸している場合であれば、ペット禁止を約束して実行することが可能です。建物の構造上、マンションの住民は壁一つ隔てるだけの生活になり、ペット飼育で糞尿による汚損や臭気、病気の伝染や衛生上の問題、鳴き声による騒音、咬傷事故等から他の入居者の生活に影響をもたらす恐れがあり、しつけが行き届いていても他の入居者に対して不快感を生じさせる可能性があります。そこで、ペット禁止として賃貸した賃貸人はこれを守る義務があり、賃貸借契約の違約になり、賃借人は契約を解除し、損害賠償請求も可能です。
とはいえ、まわりに悪影響を及ぼさない小動物とか、管理を厳格にするという条件下であれば、違約といえるかは疑問です。
しかし、契約時にお子さんの動物アレルギーを賃貸人に告知し、ペット禁止が契約の条件であることを明確にしていた場合は別です。転居に要する費用なども損害賠償請求できるでしょう。
※2010年9月17日号