俳優にとって、表情は演技の生命線のはず。“2時間ドラマの帝王”船越英一郎(50)が、顔面マヒに罹患し、一時休養を発表した。タフさが自慢だった船越だけに病状が心配されるところだ。神経疾患の専門家である帝京大学医学部の栢森良二教授(リハビリテーション科)が解説する。
その原因については、長らく不明だったが近年の研究により、かなりの解明が進んできた。その発症頻度は10万人に30人程度というが、誰しもが罹患する可能性があるという。
栢森教授は語る。「原因として最も多いのが、口唇ヘルペスに起因する単純ヘルペスウイルスによるもので全体の6割を占める。このウイルスは、多くの人々の体内にあり、普段は休眠状態です。疲労がたまったり、ストレスが多い時に、このウイルスが再活性化され顔面マヒを引き起こします」
口唇ヘルペスとは風邪を引くと唇にぷつぷつとできる発疹のこと。単純ヘルペスウイルスによる顔面マヒは0歳児から発症することもあるという。
「単純ヘルペスに続き発症例が多いのは帯状疱疹ウイルスによる顔面マヒです。こちらは合併症として顔や耳に湿疹が出ることもあり脳神経を圧迫する。平衡感覚にダメージを受け、めまいなどの症状が表われることもあります」
どちらのウイルスも治療は抗ウイルス薬の投与などにより行なうという。
顔面マヒはストレスや病気、妊娠など体の抵抗力が落ちている人ほど罹りやすい。船越も今年、母と妹を立て続けに亡くし心労がたまっていたという。様々なストレスに悩まされるサラリーマン諸氏にとっても、対岸の火事ではなさそうだ。
※週刊ポスト2010年9月17日号