韓流ファンの奥様が韓国へ行く一方、中年男性の足が北海道へ向いている。お目当ては「ゴールデンバージ」。満13歳の牡馬(オス)で、人間の年齢に換算すると60歳近い中高年の馬である。
ゴールデンバージは、北海道帯広市が主催する地方競馬「ばんえい競馬」(ソリを引いて走る障害レース)に出走していたが、2009年末、成績不振から引退し、馬肉処理される寸前だった。しかし、ひとりの調教師の目にとまり、再調教を受けてばんえい競馬に復帰した。
ゴールデンバージを救った山田勇作調教師(山田厩舎)は、出会いをこう語る。
「引退後に草ばんば(草レース)で走っている姿を見て、私が得意とするタイプの馬で、調教すればまだまだ走れると感じた。それが頭の隅に残っていて、今年になって廃用馬になると聞いたので、馬主に頼んで買い取ってもらったんです」
当初は草ばんばを走らせるつもりだったが、口蹄疫の問題で次々に中止に。そこでばんえい競馬に再登録したところ、ブランクをものともせず7月19日の復帰初戦で勝利。2着に大差をつけた圧勝だった。
復帰後の戦績は4戦3勝。満13歳での勝利はばんえい競馬の最高齢記録で、今後は勝つたびに記録を更新していくことになる。
この中高年の馬の活躍を地元紙や専門誌が報道し、まずは地元で評判になった。帯広市役所ばんえい推進室では「ゴールデンバージ効果などで入場者数は8割アップしました」という。
さらに『みのもんたの朝ズバッ!』(8月19日放送)や『笑っていいとも』(9月2日放送)でも採り上げられ、いよいよ人気は全国区になりつつある。
山田氏は「千葉県の女性から、『リストラされた夫がテレビでゴールデンバージの姿を見て、元気を取り戻した』という感謝の電話もいただきました」と語る。連戦連敗だった高知競馬のハルウララが“負け組の星”なら、リストラからい上がってきたゴールデンバージはまさに“中高年の星”。我々も馬には負けていられない!
※週刊ポスト2010年9月17日号