通信社記者時代から40年以上にわたって外国のニュースを扱ってきた外交評論家の田久保忠衛氏は、最近の日本人に国際的緊張感が失われていることを感じ、軍事大国化する中国に「ノーガード」であることに、強い懸念を抱いている。以下、田久保氏の意見だ。
今や中国は防衛費が実質的に日本の3倍という軍事大国となった。外交と軍事を車の両輪として13億の人口を養い、日本の25倍の国土を富ませていこうという考えなのだ。当然、周辺国には大きな圧力となっているが、日本の政治家はそこまで思い至っていない。
中国の戦略的な行動はこれだけではない。中国海軍の寄港を視野に入れた、インド洋諸国の港湾整備への資本投下や、中国とミャンマーを結ぶ2380キロの原油・天然ガスパイプラインの着工などがそれにあたる。エネルギー資源、鉱産物、木材などを狙ったロシア極東部への進出、カスピ海から原油・天然ガスを引き込むためのパイプライン完成など世界的膨張をどう考えるか。
そんな中国に対し、日本は刺激をしないよう遠くから見ているだけでいる。世界でこれほどノーガードなのは日本だけといっていい。
自衛隊は軍隊ではないし、韓国、中国、ロシアなど周辺国と反対に防衛費は減らすばかりだ。さらに、日本の自衛隊は法的にがんじがらめで、緊急時に迅速に対応することができない。自衛隊を他の普通の民主主義国並みに国軍化させるべきだ。
日本の全国会議員に、中国を脅威と見るかどうかの二者択一で質問したい。次の選挙でどうやったら当選できるだろうかと私益だけを考えているような人間ばかりで、本当に外交・防衛を理解している政治家が一体何人いるだろうか。
日本が戦略的な視点と国際的緊張感を取り戻すことこそ急務なのだと私は考えている。
※週刊ポスト2010年9月17日号