「フリン効果」とは、ニュージーランドの心理学者、ジェームズ・フリンが発見した、先進工業諸国の人々の平均知能指数が年々向上しているという現象。新聞、ラジオ、テレビなどの新しいメディアの登場によって、生活の中でより多くの情報を高速で処理するようになり、脳の働きが高度化しているらしい。脳科学者の茂木健一郎氏が解説する。
インターネット、携帯電話などの普及にともなって、情報環境はますます豊かなものになってきている。フリン効果の示すところによれば、これらの新しいITのもたらす時代の空気に触れているだけで、次第に脳の働きが高度になる。私たちは時代とともに歩くだけで、気付かないうちに「脳トレ」をしているのだ。
ツイッターの使われ方を見ていると、脳の前頭葉の働きによく似ているところがある。「フリン効果」の考え方からすれば、ツイッターをうまく使う人は、自然と前頭葉を鍛える機会に恵まれるはずだとも言える。
前頭葉は、視覚、聴覚、触覚といった各感覚の情報を処理したり、言葉の意味を扱ったりといった具体的な処理をするのではない。むしろ、さまざまな情報のうち、どれに注意を向けるか、何に脳の計算資源を振り分けるかという選択、判断に携わる。
ツイッターもまた、前頭葉のように、どんな情報に注意を向けるか、資源を振り分けるかという選択を行なうメディアだと考えることができる。140文字という制約もあって、具体的な情報を詳細に盛り込むには足りない。
しかし、これから何が流行るか、現代を生きる上で重要な発想は何か、誰が面白いことを考えている人かといったテーマをめぐっての選択、集中には適したメディアである。
140文字という制約ゆえにかえって、ツイッターは、ますます複雑巨大になる現代社会についての迅速な「仕分け」作業をやるのに適した場となっている。
※週刊ポスト2010年9月17日号