放駒新体制で臨む初めての本場所となる秋場所は、賭博問題で謹慎した力士の復帰、横綱・白鵬の連勝記録などに注目が集まったが、それ以上の“大一番”が、平成の大横綱・貴乃花親方(38)と昭和最後の大横綱・九重親方(55、元横綱・千代の富士)の対決である。
相撲協会は65歳定年制のため、現在、理事長を務めている62歳の放駒親方は2年後の理事選には立候補できない。その後継と目されているのが、かつての名横綱2人なのだ。
一歩リードしているのが先月、審判部長に就任した貴乃花親方。
「審判部長は勝負審判や番付編成などの重役を担う要職で、理事長になるための出世コースです。テレビ中継に映るので、“協会の顔”という意味合いもある」(協会関係者)
だが、当の貴乃花親方は、イメージキャラクターに徹するつもりはないようだ。就任会見では、「お客様も力士も納得のいく判定基準を作りたい」と宣言。
「審判部の課題は、立ち合いの徹底や無気力相撲の摘発。貴乃花親方はそれに積極的に乗り出す構えを見せている。おそらく、これまでの審判部のやり方は手ぬるいと感じていたのでしょう」(貴派の若手親方)
これに慌てているのが前任の九重親方。貴乃花親方が大胆な改革を断行すれば、結果的に前任者の不甲斐なさが露呈してしまうからだ。
「年齢や現役時代の実績、知名度を考えれば、九重親方は次期理事長候補の最右翼といえます。だが、貴乃花が審判部改革で成果を出せば、理事長の椅子が遠ざかる。九重親方は改革がスムーズに進まないよう、親しい一門の親方を審判副部長に送り込んだ。貴乃花親方の動きを監視し、改革に“物言い”をつけさせる腹づもりでしょう。秋場所では貴乃花親方が土俵改革を貫徹できるかが注目されます」(スポーツ紙相撲担当記者)
思い起こせば91年の夏場所初日に35歳の千代の富士を寄り切りで破り、大横綱に引退を決意させたのが18歳の貴花田(当時)だった。それから19年―。再び因縁の対決となった「次期理事長争いの取組」で、歴史は繰り返されるのか。
※週刊ポスト2010年9月17日号