アメリカ在住のジャーナリスト・小国綾子さんが、「アメリカの子供はなぜ、思春期でも親と仲が良いのか?」について分析をしている。
小国氏は「何か変だ」とした上で以下のように語る。
「古今東西、思春期は親に反抗するものではないか。そこで、アメリカ人の親子にあれこれ事情聴取するうち、ある事実に行き着いた。アメリカ人親子のベタベタぶりの秘密は、『車社会』にあるようなのだ。
公共交通網が未発達のアメリカでは、運転免許を取得できる年まで、親に車で送迎してもらわない限り、どこにも行けない。友だちの家に遊びに出かけるにも、親の送迎は不可欠だ。小学生だけで電車に乗って出かけたり、子供同士で近所の店で買い食いする、なんてことは、今のアメリカの都会ではありえない。
あるアメリカ人ママの証言。『週末が近づくと、中学生の息子がニコニコと愛想良くなり、家の手伝いをし始めるのよ。私の機嫌を損ねたら、カノジョとのデートもおじゃんだからね。うっしっし』。おまけに、車で送迎すれば、車の中では親子っきり。これが親子の貴重な会話の時間にもなってるんだって。『車で送迎』は、思春期の子をもつ親にとって最強の武器ってわけか」
ただし、小国氏の友人・アンは小国氏に反論する。
「でも、あんたもアメリカの親子を美化しすぎよ」。そういわれた小国氏はこう続ける。
「実はカノジョ(アン)、息子の反抗期にかなり苦労したという。『車で送迎すれば、親子の会話が自然と生まれるって? 冗談じゃないわよ。うちなんか、重苦しい沈黙の中、何時間車を走らせたことか。日本みたいに子供を一人で行動させられない分、親のストレスはすごいのよ』
なるほど、車社会には車社会ゆえの苦労があるのねえ」
※週刊ポスト2010年9月17日号